第16章 餌付け
ん、待てよ?
てことは、私はよそ様のよそ様の家にいるってこと?
「それ、私居ていいんですか…?」
そんな、家主に断りなしに勝手に入ってご飯を食べるだなんて…、
「ああ、家主に許可は得ています。あなたは気にせず待っていてください」
…それならまあ、いいか。
にしても、まじででっかい家だなぁ。
掃除が大変そうだ。
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しばらく呑気に待っていると、沖矢さんがビーフシチューを運んできてくれた。
「どうぞ、お口に合うといいんですが」
「い、いただきます……」
スプーンに1口分すくって、湯気がたったそれを口にする。
……やばい、めっちゃ美味しい。
「やばいです…!すっごく美味しいです!!
こんなに美味しいビーフシチュー初めて」
私は思わずそう叫んで、2口目3口目とビーフシチューを食べていった。
向かいに座った沖矢さんはというと、頬杖をついて私が食べる様子をじーっと眺めている。
そんなに見られると、食べづらいんだけど…
「…あの、沖矢さんは食べないんですか?」
「ああいや、君が美味しそうに食べる姿が可愛らしくてね。
思わず見惚れてしまいました」
よくもまあ、そんなスラスラと恥ずかしいセリフが出てくるもんだな。
まるでどっかの奇術師みたいだ。
「…ビーフシチューすごく美味しいので、冷めないうちに食べてください」
私は恥ずかしくなって俯き、別に作った訳でもないのにそんな事を言った。
「そうですね、ではいただきます」
そう言って、沖矢さんもビーフシチューを食べ始める。
まあ、あなたが作ったものなんだけど。
会話無く黙々と食べ進めていく。
ちょっと気まずい。
「…沖矢さんは何をされてる方なんですか?」
沈黙に耐えかねた私は沖矢さんへ質問をした。
「東都大の院生をやってます」
と、東都大…!?
私が英語のせいで転けた超名門じゃんか!!
しかも院生だなんて…。
この人頭いいんだなぁ。
おいおいちょっと待て、てことは……
「あ、あの、年齢は?」
「27です」
雰囲気が大人だったからてっきり年上かと思っていた…。
てことは、私は今年下の男に飯を食わせていただているのか。
なんとも情けない…。