第15章 奇術師
「…っ!!」
そういう事か!!
だからキッドはあの目に焼き付くほどの白い衣装を纏っているんだ!
コナンくんの方を向くと、どうやらこの子もそのトリックに気が付いている様子。
「コナンくん、手伝ってくれない?」
「もちろん、そのつもりだよ」
私たちは2人でニヤリと笑った。
『さぁ、夜の帳も落ちて参りました!
キッドコールが沸き上がる中、はたしてキッドは昨夜と同じく交差点の真ん中に展示された伝説のミュール、パープル・ネイルを手中にし、今夜もあの奇跡の瞬間移動を成し遂げることができるのでしょうか?』
群衆もテレビ局も盛り上がる中、昨夜同様尻にプロペラをつけたキッドが上空へ現れた。
『怪盗キッドです!!怪盗キッドが姿を現しましたー!!』
するとキッドは、爆発することなくそのままショーケースの上へ降り立った。
「長らくお待たせいたしました。
では昨夜同様、我が肢体が時空を超える様を、とくと御堪能あれ」
そう言ってミュールを手にすると、キッドは姿を消した。
______
群衆の中へ3枚のカードが次々に放たれていく。
1枚目は『Three』
2枚目は『Two』
3枚目は『One』
「Zero…
残念だが、今夜のマジックショーはタダ働き。
報酬は0だぜ?月下の奇術師さんよ!」
キットが現れるはずの屋上には、メガネの少年。
江戸川コナンが待ちわびていた。
「重りを捨てろ!!早く!!」
彼の姿を見るなり、キッドはマイクから仲間へ伝えると、デパートの側面にある電光掲示板の途中で止まった。
「瞬間移動のトリックは極めて単純!
井戸とかに使われている滑車の原理さ!
まずテレビ局のスタッフに紛れ込ませたお前の仲間に、撮影の隙を見てこのふたつの滑車を屋上の柵に付けさせ、それに渡すワイヤーの片方を仲間につなぎ、もう片方の先にはフックを付けてビルの下まで垂らす。
後は展示台から消え、群衆を掻き分けてビルの下まで辿り着いたお前がそのフックを体に引っ掛け、その合図を待って仲間がビルから飛び降りるだけ。
仲間の体重を重りでお前より少し重くなるように調節しておけば、滑車の原理でお前の体はみるみるうちに屋上へ到達し、素早く滑車を回収して瞬間移動したかの如く出現できるってわけだ!」