第15章 奇術師
「それで、貴方はどうやってここに?」
「簡単よ。あなたが飛んでいった方向と今日の風向き、そしてハンググライダーの速度を考慮して計算したの。
でもまさか、本当に会えるなんて思わなかったわ」
「それはそれは、こんなに素敵なレディに追われるなんて光栄だ」
全く、よくもそんなキザなセリフがするする出てくるもんだ。
「ねえ、1つ聞いてもいいかしら?」
「何なりと」
「……あなたは、魔法使いですか?」
1番聞きたかったこと。
これを聞くために、私は今ここに立っているんだ。
「…残念ですが、私は魔法使いではありません。
ただの怪盗、そして奇術師です」
やっぱり…、やっぱりそうなのか…?
あなたは……
「……黒羽、盗一さん……?」
そう私が口にすると、彼はピクリと肩をならした。
そしてゆっくりと私の目の前まで歩いて来ると、人差し指と親指で私の顎を持って上を向かせ目を合わせた。
「…何故、その名前を?」
私の目の前にある顔は、黒羽盗一さんではなかった。
似ているが、違う。
「……あなたは、だれ?」
見つめ合いながら、互いに質問を投げかけ合い、互いの質問には答えない。
そんな膠着状態がどれほど続いたのか、定かではなかった。
______
「__さんっ!さんっ!!」
体を揺すられて、目が覚めた。
いつの間に眠っていたのか。
「はぁ、良かった…」
「蘭さん……?」
私を起こしてくれたのは、どうやら蘭さんのようだ。
「朝家を出たら、探偵事務所の前でさんが寝ていたのでびっくりしました!
大丈夫ですか?一体何があったんですか?」
蘭さんは焦った様子で私に尋ねた。
「わ、私にも、何がなんやら…」
どうやら、毛利探偵事務所のドアの前で眠っていたらしい私。
肩には黒いジャケットがかけられている。
一体何故、私はこんな場所にいるんだろうか?
「とりあえずうちに入って下さい!
ちょうど、今日は日曜で学校も休みですし」
蘭さんに連れられるがまま、毛利さん宅へお邪魔した。
「お、お邪魔します…」