第15章 奇術師
「キャー!!キッドよ!」
「怪盗キッドキターー♥」
周りの黄色い歓声に誘われて上を見上げると、漆黒の夜空を背に怪しげな白い姿の怪盗キッドが上空に現れた。
「キッド様〜〜♥わたしはここよー♥」
「ホントに来た…」
園子さんは周りと一緒に黄色い歓声を上げ、蘭さんは私と同様驚いたように夜空を見上げている。
すると突然
プシューーボンッ!!
という音と共に怪盗キッドが爆発し、白いモヤの中から展示された宝石の上へ舞い降りてきた。
「「「か、怪盗キッド!!!」」」
宝石を囲んでいたガードマン達がそう叫ぶと、それを皮切りに周りの観客やテレビ局は、キッドのいるショーケースへワッと集まっていく。
「すごーい!あんな高い所から飛び降りるなんて…!」
「まるでスーパーマン…!」
園子さんと蘭さんが感心しているところ悪いが、あれは恐らくラジコンか何かで飛ばしていたダミーを爆発させ、それにみんなが目を奪われている隙に、群衆から抜け出して展示台に忍び寄り飛び乗ったといったところだろうな。
マジシャンと言っても、所詮はただの小賢しい盗人か。
「か、怪盗キッドさん!何か一言!」
アナウンサーがキッドへマイクを向けた。
「あ、では鈴木次郎吉相談役に伝えてください。
今回は寝耳に水な話、十分な時間が取れず予告状を出せなかった無礼をお許し頂きたい…とね♥」
白いシルクハットの鍔をつまみんでキザに言い放ったその姿は、悔しいがまさに“月下の奇術師”そのもので、
なんだか、あの人に重ねてしまった。
「…黒羽盗一さん……」
途端に四方を網が囲み、錦座四丁目が高さ約20メートルの巨大な網で仕切られた。
なるほど、ここから脱出しようにも地上にいるからハンググライダーは使えず、気球か何かで飛ぼうにも上空のヘリが邪魔する。
群衆に紛れて網を超えようにも、スタッフの入念なチェックが入るため即アウト。
キッドをここから出すまいという執念を感じる策だな。
「この後は、一体どうするつもりですか!?」
アナウンサーがまたもキッドにマイクを向けた。
「そりゃーまあ、仕事が済んだので家に帰ろうかと…」
「ど、どーやって!?」
「テレポーテーションで」