第15章 奇術師
平日の昼下がり、毛利蘭と鈴木園子と江戸川コナンは学校から帰宅中であった。
「え?具合が悪いの?あの次郎吉おじさんが!?」
「そうなのよ!殺しても死にそうになかったのに、最近は食事もノドを通らないらしいよ!!」
「何か大変な病気なの?」
「病気っちゃー病気かもね…ハートの」
「ハ、ハートの?」
「ええ、毎晩うなされて汗ビッショリで跳ね起きるってさ!
夢の中の彼の笑顔で♥」
「彼って……」
「彼よ彼!」
「彼って誰なの?」
「え!さん!!??」
職務を終えて本庁に戻ろうとした時、見覚えのある女子高生がいたから声をかけようと近づいたら、何やら面白い話をしていたので思わず割って入ってしまった。
背後から突然話しかけられた蘭さん達はとても驚いた様子だ。
「久しぶりぶりね、蘭さん。コナンくんとはよく会うわね」
「どうも、ご無沙汰してます」「こんにちはー」
「ねえ蘭、誰?この超絶美人」
「えっと、この人はさん。警視庁の女性警察官なのよ」
「えっ!?こんな美人な人が警察官!?」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない?
初めまして、です」
「あ、どーも!鈴木園子です!」
ボブの長さの髪に可愛らしいカチューシャを着けた、愛嬌たっぷりのこの女の子は園子さんというらしい。
なんでも、あの鈴木財閥のお嬢様なんだとか。
蘭さんとは小さい頃からの親友なんだそう。
「それで?彼って誰なの?」
「キッド様ですよ!キッド様!」
「キッド…?」
「知りません?
あの月下の奇術師、怪盗キッド様です〜!!」
もちろん知っている。捜査二課が手を焼いている神出鬼没の大泥棒。
盗んだ宝石が目当てのものでないと、持ち主に返すという噂の。
「そのキッド様とうちのおじ様、長年対決しているんですけど、毎度キッド様がお宝を盗んでいっちゃうので、遂に夢にまで出てくるようになったらしくて」
「それで、鈴木次郎吉相談役は夜も眠れないと」
「そーゆー事です!
ま、私はキッド様に会えるなら夢でもどこでも大歓迎なんですけど♥」
「もう、園子ったら」
呆れた様子の蘭さんに思わずふっと笑みがこぼれる。
女子高生可愛いな。