第14章 魔法の呪文
「警部!屋上のレストラン街のトイレ用具入れから、レインコートと手袋と拳銃の入った紙袋が発見されました!」
恐らく、この犯行に使われたものだろうな。
だとしたら、容疑者3人の服を調べても硝煙反応は出ない可能性が高い。
「コートは細身の男物で、丈はちょうどトビーさんにピッタリ合うかと」
「おいおい、そのくらいのサイズならFBIだって言うそこの男も無理やりなら着れるんじゃないか?
それに、そこにいる秘書だって着れるぜ?大は小を兼ねるって言うしな」
トビーさんが疑いから逃れるかのようにそう言った。
でも、確かに容疑者は第1発見者であるイリーナさんも含まれるか。
「あれれ〜おかしいな?
社長さんの右手、何かつまんでたみたいな形してるよ!」
「あら、本当ね」
コナンくんの言う通り、血痕が付着した社長さんの手は何かを持っていたように硬直している。
社長の周りで何か持つようなものがあるとすれば、メモ用紙と一緒に机の上置いてあるペンくらいだろうか。
「あー!!ペン軸とメモ用紙の端に、わずかですが血の付いたような痕跡が!メモ用紙にはうっすらと何かが書かれていた跡もあります」
高木くんが気付いたように大きな声でそう言った。
だとしたら社長さんは死ぬ前に何かを書き、それを犯人がちぎって持ち去ったということか。
「なら、早く血液鑑定と書かていた文字の割り出しをしましょう!
もちろん、その字が社長さんの筆跡かどうかも」
「は、はい!!」
私の言葉を聞いて、高木くんは急いで鑑識さんの元へ向かった。
勝手に高木くんに指示を出した私をジト目で見てくる目暮警部。
「あ、あはは。すみません、昔の癖で…」
「はあ、まあいいがね」
「ペンとメモ用紙に付着していた血液は社長本人のものでした。
あと、書かれていた文字の跡も社長の筆跡だと。
内容は英語で書かれていたんですが、意味が何というか、とてもダイイングメッセージとは…」
「ちょっと見せて」
吃る高木くんから手帳を奪う。
そこには、確かにダイイングメッセージとは言い難い内容が書かれていた。
「Bring my tux …
私のタキシードを取ってきてくれ……?」
その場の全員が首を傾げた。