第14章 魔法の呪文
高木くんが連れてきた容疑者のうち
1人目は、レストラン街をうろついていたトビー・ケインズさん
2人目は、そのフロアのトイレに潜んでいたハル・バックナーさん
3人目は、階段を汗だくで駆け降りていたアンドレ・キャメルさん
「おいおい、うろついてたなんて人聞きが悪いなァ」
そう話す彼、トビーさんは父がアメリカ人で母が日本人のハーフだという。
「彫りの深い顔に生まれたお陰で、モデルをさせてもらってるよ!
知らないかい?『アンノン』ってファッション誌!たまに俺、載ってるんだけど」
私の方を見て聞いてくるトビーさん。
「ごめんなさい、ファッション誌には疎くて…」
そんなの買って読んでる暇なんて無いっつーの。
「あ、あのー、僕もトイレに隠れていた訳じゃありませんよ!ちょっと生徒のことで悩んでて…」
そう話す彼、ハルさんはこの近くの塾で英語教師をしているらしい。
「実は、生徒の1人を好きになってしまって…。
今日このホテルのレストランに呼び出すつもりだったんですけど、いざとなったら言葉が思いつかなくて…」
「あらま、それでトイレに?」
「は、はい、悩むとこもりたくなるので」
生徒を好きになるなんて教師としてはどうかと思うが、まあ可愛い悩みなので良しとしよう。
「それで、汗まみれで階段を駆け降りていたあなたは一体何をしていたんです?」
「み、見れば分かるでしょ?トレーニングですよ!」
確かにジャージ姿で1人浮いてはいるが、ホテルでトレーニングって…
もっと他にあるでしょうに。
「このホテルの階段は高さも長さもトレーニングにはうってつけなんですよ!
仕事柄、体がなまると困るので」
「ん?体がなまると困るお仕事をされているんですか?」
「えっ!え、あ、その…」
私の質問に明らかに動揺するキャメルさん。
顔も傷だらけだし、人相も悪いし、この人怪しいな。
「言えないような仕事をしているのかね?」
「旅行先でトレーニングというのもおかしいですから、観光客とも考えずらいですね…」
目暮警部と高木くんも疑いの目を向けている。
その様子を見ていたコナンくんが、誰かに電話を掛け始めた。