第13章 鳥取…?
そんなチョーさんから鳥取に派遣されることになったと聞いた時は驚いたが、それと同時に適任だと思った。
だって、私の中のチョーさんは誰よりもかっこいい凄腕刑事なんだもの。
「ま、見送りは来なくていいって言われちゃったんだけどね」
「そうだったんですか…
なんか意外です」
「え、何が?」
「だって、さんに右も左も分からない時期があったなんて」
佐藤の言葉に「それな」と言った後、ビールを追加で頼む由美。
どんだけ飲むんだよ。
「いや、誰しも新人時代はあるでしょ。
あんたら私の事なんだと思ってんの?」
「怪物」「ゴリラ」
「おいおいおい、お前ら殴られたいか?」
「「そういうとこです」」
口を揃えて言いやがって。
ちょっとショックなんだけど…。
「はぁ、だから彼氏が出来ないのかしら」
頬杖をついて項垂れた。
私も今年で29歳。三十路の壁が目の前に迫っているのだ。
「庁内の男共もさんには敵いませんもんね」
「それは大袈裟すぎ」
警視庁に何人男がいると思ってんだ。
あんたたちは本物のバケモンを見たことがないからそう言えるんだ。
「あれ、でも前に彼氏出来たって言ってませんでしたっけ?」
「あー、合コンの時の彼?」
「どうなったんですか?あの後」
実は、半年ほど前に1度だけ合コンへ行ったことがある。
もちろん、由美に無理やり連れてかれて。
「いいですか?警察官ってのは絶っ対に内緒ですよ!!婦警なんてモテないんですから!!」と、由美に言われた通りに私達はまるで大手の事務でもしてるかのように、警察官の影など感じさせないほど上品に振舞ったのだ。
その時、1人の男性が声を掛けてくれて連絡先を交換した。
その後何度かご飯へ行き、告白された。
とても感じのいい人で、真剣に考えてくれてるようだったので快く承諾した。
しかし、これが間違いだった。
さすがに付き合ってからも内緒にするのは良くないと思い、自分が警察官であることを打ち明けた。
そうしたら、
「あー、俺、女の子は守りたい派なんだよね」
そう言われて振られた。
付き合って3日で。
ずっと秘密にしていた私も悪いとは思うが、まさか相手にもこんな本性があるなんて思わなかった。
言われた瞬間は、危うく手が出る所だったが大人なので我慢した。
えらい。