第1章 憧れが好きへ
こんな…顔もするんだ…
それは何故だか凄く意外で…
どことなく冷たいような印象を持っていた彼とはまるで違う姿だった。
「あれ?こんな所に女の子?」
彼の後ろにいた私に気が付いたのか、ひょっこりと顔を出した彼女は私へニッコリと微笑む。
その表情はまるでお花が咲いたみたいに明るく可憐で、とても可愛い…思わず女の私でもポーッと見惚れてしまうほどだ。
彼の…友達だろうか。それとも…彼女…?
「大丈夫?変なことされなかった?悟に」
「呪詛師じゃなくて俺かよ」
「え、あ!大丈夫です…」
まさか自分に話しかけられるとは思っておらず、彼女を見つめ慌てて答えると。
彼女は「良かった!」と優しく笑うと再び彼へと視線を戻した。そんな彼女も彼同様、やはり見たことのない制服を着ている。2人は同じ学校なのだろう。
「あ!やばい!傑からたくさん着信来てる!」
「お前のこと探してんだろ、さっさと折り返せ」
慌てて携帯を取り出し走り出した彼女の背中には、竹刀…だろうか?筒状の袋を背負っていて。あんな華奢な身体つきなのに剣道でもやるのかな…?と考えていると。
その背を追うようにして白髪の彼も歩き出した。
私はその背中にもう一度お礼を言おうとしたけれど、脚が長いからか、彼はあっという間に遠くまで歩いて行ってしまい…私はただその背中を見送るしか無かった。