第1章 憧れが好きへ
「あー、平気か?」
彼は私へそっと手を差しだすと、手を取った私の身体をグイッと引き上げてくれる。
声…初めて聞いた。声までカッコイイとか、この人は一体何者なんだろうか…
そしてその瞬間、サングラスの隙間から見えた瞳に思わず目を奪われた。
アクアマリンのようなキラキラとした色の瞳。
綺麗だ、こんなに綺麗な瞳は見た事がない。
カラコン…ではないよね。だってカラコンにしては綺麗すぎる。
その瞬間思う。そうかいつもサングラスをしているのはこの瞳を隠す為なんだ。こんな綺麗な瞳を晒してたらそれこそ目立って仕方ないんだろうから。
思わずボーッと彼を見つめていると、彼は私がしっかりと立ち上がったのを確認してからパッとすぐに手を離した。
ドッドッドッとやけに心臓の音がうるさい。
ありえないほどのイケメンを目の前にしているからだろうか。
絶対に関わる事などないと思っていた人物の視界に映ったからだろうか。
それとも……
「あ、の…」
何か声をかけようと言葉を発した時だった。
「悟ー!!」
明るく元気な女の子の声が裏路地に響く。
彼は私に向けていた視線を、その声がした瞬間パッとすぐさまそちらへと向けた。
「おっせーよ、こっちはとっくに片付いてるっつの」
少し乱暴な口調なはずなのに、その声は何処か甘く優しげで…私と話していた時とは違って聞こえるのは気のせいだろうか。
「ごめんごめん!実は傑とはぐれちゃってさぁ」
「こんな所ではぐれるとかアホか」
「だって傑足速いんだもんー」
ケラケラと楽しそうに笑う彼の表情を見て、いつも不機嫌そうな顔しか見た事がなかった私は思わず目を見開いた。