第1章 憧れが好きへ
おそらく…彼は甘党だ。
ブラックコーヒーなんか飲まない。
私は彼の事を何も知らないんだと現実を突きつけられる。
当然だ。
何故なら私達は知り合いですら無いんだから。
彼の瞳に私が映ることは…もうきっとない。
何故なら彼は、彼女しか見ていないから。
あの優しい瞳を向けるのも
優しく頭を撫でるのも
甘い声で囁くのも
全部全部彼女だけだ。
彼女のためにだけある…優しさだ。
だから彼が、私を見てくれることなんて…
きっと一生…ない。
そう思いながら、私はブラックコーヒーをコートのポケットへとしまうとそのまま背を向け歩き出した。
いつの間にか好きになっていた。
私にも笑顔を向けて欲しいと…そう思ってしまった。
ただの憧れだったはずなのに…
いつの間にか恋をしてしまった。
「はぁ…苦しいなぁ…」
私は今にも雪が降り出しそうな空を見上げ。
白い息を吐き出すと…
そっと瞳を閉じて涙を流した……
end