第1章 憧れが好きへ
そんな事を思っていた矢先だった。
まさか私がこの人と少しでも関わる事になるとは…
彼の視界に映り込む日がくるとは…思ってもいなかった。
「やっやめてください!」
「悪いようにはしないからさ!普通の宗教みたいなものだよ、君くらいの歳の子達もたくさんいる」
「すみません…そういうの興味ないので離して下さいっ」
駅から少し離れた裏路地で、私の後をつけてきていた二人組の男が訳の分からない勧誘をしてきて…私の腕を強く掴む。
あまりの力の強さにブンブンと手を振り抵抗しようとするが、全くと言っていいほど離れない。
どうしよう、怖くて手も脚も震える…
今にも泣き出しそうになっていた時だった…。
「おいおいおい、一般人に手出すなよな〜これだから呪詛師はクソばっかりで嫌んなるわ」
ドカッッ!!という大きな音と共に、私の腕を掴んでいた目の前の男が吹っ飛んで行く。
それに大きく目を見開けば、私の視界に映り込んできたのは、こちらに背を向けた見覚えのあるあの透き通るような白髪の頭。
そして彼はポケットから携帯を取り出すと「もしもーし傑?終わったけどそっちどう?」とまるで何ごとも無かったように電話をし始めた。
一体何が起きたのか分からない。この人が助けてくれたんだろうか…私は驚きながらも電話を切った彼の背中にとりあえず小さく声をかける。
「あの…ありがとうございます」
そんな私の声に気が付いたのか、白髪の彼はゆっくりとこちらを振り向くと道路へしゃがみ込んでいた私を見下ろした。