第51章 ☆ 過去〈Ⅱ〉 ☆ ロー視点 ☆ ① ☆
クロガネ屋は小さく息を吐き視線を逸れした
クロガネ)「…ワシは果たせなかった。娘を殺され、次に妻を殺され、ワシは戦えん体になった」
ロー)「…」
クロガネ)「…ワシは死のうとしておった…そんな時アヤに会ったんじゃ。身体中包帯だらけで片目も包帯で見えておらず、無表情の顔に死んだような目をしておった。しかも裸足で…立つのもやっとな、そんな奴が…ワシの前に現れて一輪の花を渡してきたんじゃ。アヤは覚えとらんじゃろうがな。保護されて1週間しか経っておらず、あいつは喋る事も出来んかったのに…あいつが渡してきたその花は妻や娘が好きだと言っとった花だったんじゃ」
ロー)「…」
クロガネ)「ワシはアヤに縋って泣いてしまってな。恥ずかしい話じゃが…あの時その花を見て、妻達の願いを思い出してな…ワシに『生きて欲しい』と言ってた願いを…病院から抜け出して何故ワシの前に現れたのか、何故あの花を持っとったのかは知らんが、ワシは命と心を救われたんじゃ…忍を辞めて鍛冶屋になって、ミナトに頼んでアヤを引き取るようにしたのはワシから言ったんじゃ。あの時のアヤは笑う事しか出来んかったから色々教えてやったわい」
ロー)「…アヤはいい父親を持ったんだな」