第89章 ★ 涙 ★ 夢主視点 ★ ① ★
ロー)「…」
「その男に声が出せないようにか…力強く口元を押えられて…地面に押し付けられてて…抵抗するんだけど、離れるわけなくて…余計に力を入れられて…殴られて…痛み付けられて…私は泣いてるの…子供の私は泣くしか出来なくて…今でも…夢だけど、それが怖いの…」
ロー)「…トラウマか?」
「たぶん…そうだね…どんなに力を付けても、それが変わらなかった…でもここは…安心した…違う世界ってだけでも、逃げれた気がした…けど、逃げれてなくて…だから、余計に…」
ロー)「…そうか」
「…夢でね、声が聞こえたの」
ロー)「声?」
「《早く見つけろ》って…言われた気がした」
ロー)「…言われた?」
「うん…声は初めてだった…怖いとか、痛いとか…そんな感覚もあったけど…それより覚えてるのは、その紫の目…怪しく、怖く光る紫の目…そして…内側から体中切り裂かれる感覚…夢に見る…私の記憶だとしても…夢に見るのはそこまで…次に覚えてるのは、アヤになった時の、幼い頃のカカシの顔」
ロー)「…」
「…私、前にローに言ったよね…『アヤの前の人生に興味無い』って、」
ロー)「…あぁ」
「正直その夢が自分の記憶だとしても…思い出したくないと体が拒否するの。モヤがかかってなくても…思い出したくないの。私はアヤなの…その言葉に偽りはない」
ロー)「…」
「思い出すとか出さないとか以前に、あの時は師匠に言われたから気にしなかった…気にならなかった…気にしちゃいけないと思ってた…師匠は知ってたのかな?…私の事」
ロー)「…」
「師匠なら、私が殺されそうになった時の事…知ってるのかな?」