第89章 ★ 涙 ★ 夢主視点 ★ ① ★
ロー)「…やめるか?」
「え?」
ロー)「…無理しなくていい」
「…話す」
ロー)「…なら頑張れ…ここにいる」
ローはそう言って頭を撫でてくれた
「…違う意味で泣きそう」
ロー)「ふっ。お前の涙は高いんだろ?お前のもん全部買ってやると言ったはずだ。泣きたいなら泣けばいい」
「…ローのばーか」
ロー)「…あぁ。そうだな」
私の突然の暴言にローは笑って返した
ローがいてくれて良かった
「…ありがとう…」
私の言葉にローは黙って頭を撫でてた手を離して
抱き締めてくれた
「…あっちの世界でも…その夢は、たまに見てたの…でも気にしてなくて…夢より現実の方が大変で…気にならなかったんだけど…こっちに来てからも、その夢を見てて…その夢を見る回数自体は減ってたんだけど…」
ロー)「…」
「…ちょっと前に寝れなかった時があったでしょ?夢見が悪かったって言って…」
ロー)「…あの時にも見てたのか?」
「見てた…と言うか…あの時はいつもと違ったんだ」
ロー)「違った?」
「夢なのに感覚があったの…殺されそうになる感覚…夢なのに体が覚えてたって言うか…変な感じ」
ロー)「…だから顔色が悪かったのか」
「…嚇母が言ってた『体にまで影響してきてる』って…多分この事だと思う…あの時…殺されそうな夢から覚めたはずなのに、覚めてなくて怖かった」
ロー)「…だから寝たくなかったのか?」
「…独りでね。でもローの腕の中だと安心して寝れたの」
ロー)「…」
「その夢を見た後に、人が死ぬあの感覚…正直しんどかった…逃げたくなった…でも、行く所ないし…貴方と離れたくない、から…だから、守り石を急がせた…離れてても貴方を感じていたくて」
ロー)「…」
「ごめんね」
ロー)「それは何の謝罪だ?…俺は貰ってやると言ったはずだぞ。外さないとも言った」
「…うん…そうだったね。ローは言ってくれたね」
ロー)「…」
「…夢の中での私は子供で…私を殺そうとするその男が、大きく、見えるの」
ロー)「男?」
「…名前も知らない男…私に分かるのは…長めの…血より暗めの、赤い髪で…紫の目をした、男の顔」
あの男の事を考えたら…膝を抱えている腕に力が入る