第2章 邂逅編
彼はフッ、と笑った後にハルカにロープを握った片手を向ける。視界に自身に向けられたものと映ったハルカは悟の顔を見上げて息を整えながら僅かに笑った。
「……ん、」
『…ありがと』
互いの手が少し触れて、悟からハルカへとブランコを吊り下げるロープが手渡される。それを済ますと悟は、幼児用という事もあり怪我防止の為のたるんだビニールに腰を乗せ、後ろに下がっていつでも漕げるようにハルカを待つ。先に漕いで遊ばないのは友達と一緒に遊びたい、同じタイミングで漕ぎたかったのかもしれない。
ハルカはいそいそと悟に合わせ、腰を乗せて蹴り出せるようにし、悟の顔を見ると頷きあった。
僅かにキィ、ギキィと音を立ててふたりを乗せたブランコが前後に揺れる。
膝を曲げ、伸ばすハルカに下の大地を時々蹴って前後に揺れて遊ぶことを全力で楽しむ悟。今のうちに楽しむだけ楽しまないと、別の子供が来て順番だとかいって遊べなくなる。交代してまで遊ぶのであれば、今遊び誰かが来たら譲って他のもので遊べば良い。
少し前にそう提案したのはハルカだった。彼女と遊び始めて間もなかった悟は順番、と言っても聞かず他の子を怒らせたり泣かせたりしたし、順番で譲ったとしても「早くしろよ」と口に出さずとも圧力を掛けたりとなかなかに自己中心的だった。ならば『誰かに譲った後に別のもので一緒に遊ぼう?』と出来るだけ穏便に済ませたかったハルカが保育士に怒られてぶすくれてる悟に言えば、彼は少し黙った後「その提案は悪くない」と悟自身も同意している。ハルカがそう提案してから今日で一週間ほど経過しているが、その提案通りの遊び方で特に喧嘩も無くふたりは楽しく遊べている。
ブランコを全力で漕ぎ、遊びながら悟は昇降口を時々見る。寝坊したり、片付けにもたついていた子供達がこっちへと向かってきてる。先生も引き連れているからほぼ、お昼寝の片付けも終わったんだろう。せっかく遊び始めて三分経つかどうか、眉間にシワを寄せチッ、と小さい割にも舌打ちをする悟。