第2章 邂逅編
「……こっち来ませんように」
『変なお願いしちゃ駄目だよ、悟君』
漕ぐスピードを緩め、ハルカは脚を伸ばしたままに。悟も注意をしたハルカを見て同じように脚を伸ばしてゆっくりと減速していく。
悟の普段の行いが悪いのか、それとも予想が当たったのか。数人がブランコ前に立ち止り、順番待ちの姿勢を見せる。先に遊び始めた少年達も減速しようとしている中で、少し危ないくらいの時に悟はぴょん、とブランコから飛んで綺麗に着地した。
砂粒を靴底でじゃり、と言わせ、ハルカの前に立つ悟。他の子が連れてきていた先生に「もっとゆっくりになった時に降りようね?」と怪我はしなかったものの危ない行為をした悟を心配している中、悟は一度保育士に顔を向けて頷いて見せ(別に反省をしているわけでもない)すぐにハルカを向いている。
「ハルカ、遅いぞ」
少し急かすようではあるものの、悟が飛んだ時よりはかなり減速している。ハルカはタイミングを見て、一度膝を曲げてからトッ、と漕ぎ出す前の位置で着地するとブランコから離れ悟の側へ。一番人気のブランコは先生に管理されるように、待っていた子供達が悟が使っていたまだ揺れているブランコやハルカが使っていたブランコ、それから隣のブランコに乗っていた少年のブランコと名前を呼んでは次々に空いた場所へと振り分けていく光景。
待っていた悟の元にハルカが小走りに近付けば彼はハルカの手首を掴んで、相談もなく別の場所へと少し急ぐ速度で進んでいく。
視界の先にはたまたま飽きたのだろう、シーソーから少女ふたりが鉄棒の方向へと走り出してるのが見えた。シーソー周りには特に順番待ちも居ない…、という事で無言で進む方向はその子供達の居なくなったシーソー。
手首を離し、一方に座ればハルカは悟の意思を汲み取って反対側へ。ハルカが座れるようにと少し腰を浮かして彼女が片足を上げ、跨いで腰を降ろしたのを確認し、悟は腰を降ろす。慌てたハルカは取っ手を両手で掴み、お互いに交互にカコン、カコンとぎこちない天秤のように傾けあった。