第2章 邂逅編
双子という呪術師としての素質を半々に分け合った子供達は、やがて子孫が出来ていく内にその呪術師としての素質も削られていく……。
そういう後の世代の事も考えられて、当時の双子の身を案じた呪術師の父親は、虐げられる呪術師の集落を作った僧侶に任せ、そのやや非力とされる双子を集落に住まわせたのだ。父親が想定した通り、呪術師の家系の血は受け継がれてもその素質は代を重ねるごとにゆっくりと廃れていく……。そして、双子の片方が結婚し、もう片方はその集落から離れ離れ離れになって…。
血の繋がりは大切にはされていたので、記録はこの双子の件含むとある出来事の四百年先でも家系図は残っているが、呪術師である事をその集落に移り住んだ双子の世代から止め、彼・彼女は"非術師である"事に努めた。
受け継ぐのは呪いじみたものの残穢のようなもの。だからなのか、その五条の血を繋いでいく先には白髪の子供が生まれるという結果を残している。
ハルカの引越し先にまさか遠い親戚であるそんな人が居るとは思わず、そして彼女は悟と出会った時に最悪の印象を受けている。白髪ではなく、女であるという事を馬鹿にした口調で彼は言い放ったのだ。だからか、ハルカの悟に対する好感度パラメーターはマイナスから始まっている。
……今ではしっかりとマイナスを抜けているけれど。
その過去の嫌な出来事を思い出す夢を見てしまい、夢から心が抜け出す事が出来なかった。
悟に揺すられなかったら未だに蔑まれて居ただろう、夢の中のハルカ。しっかりと覚醒した今は怪我防止の為少しだけ柔らかいフロアマットの上で正座し、すぐ側でヤンキー座りをしている悟の顔を見る。
『……嫌な夢。こっちに来る前の…、』
重たそうに唇を開いたハルカがそこまで話した所で悟はハルカの顔の前にストップ、と言わんばかりに手のひらを出す。彼女は少し驚いてその先を話そうとしていた唇は少しだけ開いたままに止まった。
「あー……いい、その先は言わなくても。せんさく、はしねえよ……」
『そっか……うん、ありがと』
その"ありがとう"には深堀りしなくてありがとうという意味。きちんとそれが悟にも伝わっている。
「いーえ、どういたしまして」