第2章 邂逅編
『着いてないじゃん、嘘つき!』
「だっせー、引っかかるのが悪いんだよ。ほら、さっさと起きろよ」
『もぉーっ!』
悟に嘘をつかれてハルカは完全に眠気とおさらばは出来たものの……。
彼女よりも目覚めが悪い子供も何人か居た。保育士がしゃがみ込み、「あら、おねしょしちゃって!」と寝ながらに粗相をした園児をサポートしていたりとお昼寝の後は誰もが忙しない。
悟はぷりぷりと怒るハルカを笑い、隣に敷いてた自身の布団を片付け始めるとハルカも布団を畳んで、タオルケットも片付けられるように畳んでいく。洗いたての柔軟剤の仄かな香りが舞い上がって、ふたつの家庭の香りが交わりあった。
「しかし、爆睡だったなー…ハルカ」
畳んだ布団を両手でシワ伸ばしした悟。遅れてハルカも同じように自身用の布団を整え、いつでもしまえる状態で悟を向く。
悟はいつも通りである生意気そうな顔で、彼女を見ていた。
「いつも割とサクッと起きる方だろ?オマエ、なんかイイ夢でも見てたのか?」
……別にイイ夢なんて彼女は見ていない。むしろその逆で、その場所に戻りたくない、過去の保育園での白髪"いじり"。
色素、というよりもハルカの祖先はどうしても白髪の子供が生まれる傾向にあった。かつては呪術師という、普通の人間には視える事のないものを祓う者達の家系が彼女の先祖。
とある時代の五条家最強の男と、とても稀少な女が契を交わし、そして夫婦となり。仲睦まじいとされるふたりの関係という事もあって多くの血を残していた。その中には呪術師として双子は"ふたり"ではなく"ひとり"と考える要素になる、双子が産まれてしまった。
──その双子は男と女。
二卵性双生児であり、その女が祖先であるのがハルカ。そしてその男を祖先とするのが五条悟。現在、名字は違えども、約四百年ほど昔は家族であった、という遠い親戚に当たる存在。