第2章 邂逅編
そんな彼のジトっとした視線はバレバレなものであり、始めこそ気が付かなかったハルカもアヒルを見るのから悟を向いた時、視線の動きを見てしまった。
『(悟君…、ずっと私のからだをあちこち見てる……)』
それは決していやらしいものではなかった。ただ、知ろうとする事……興味をもっての目の動き。知った後も目で追ってしまうのはどうしてか。
だとしても、服の下に隠れていたとはいえハルカの裸体だ。触れられずとも舐められるような視線にはまだ性も発達していないハルカだって恥ずかしさを感じている。湯加減での高揚だけじゃない、自然と顔に熱が集まっていくハルカ。
誰に教わったというわけでも無いが、そっと自身の腕やら脚で、いずれは男女の違いを大きく分ける身体的特徴を隠せば悟も流石に顔を反らすしか無い。
「なんだよ……」
『いや、あの…なんていうか、私の事を悟君…ずーっと見ていたりしない…?』
そんな事を口に出されたら、と気付いた時には母親は企むような笑顔をしてる。
大きく距離を取ったわけじゃない。けれどもその訴えと身を僅かにも隠す仕草や恥ずかしい、という表情を浮かべた彼女は幼いながらも一人の女の子。悟は少し困ったようにも見えるハルカの顔を見て驚き、僅かに体を跳ねさせた為にお湯がざぶん、と音を鳴らして揺れる。
「な……っ!?」
「ふーん?そんな目でハルカちゃんを見てたんだー…悟のエッチ~!」
「ち、ちち…ちげえよっ!」
焦った表情になった悟。変な感情を持ってハルカを見ていたわけじゃないはずだと自身に言い聞かせた。口に出さずともそう言うと思った!と母を少し睨むように目で訴える悟。ハルカは体を隠しながらちゃぷ、と肩まで浸かるのを、母がのぼせてしまわないように見守っている。
「(──俺、もしかしてバレバレだったか…?いや、そんな長く見てないだろ…)」
ちゃぷ、とハルカと同じように肩まで、いや、口元まで浸かっている悟は温まったのか恥ずかしくなったのか、顔が真っ赤になっている。もっとも、ハルカも負けずに真っ赤に染まっているのだけれども。
そんなふたりを悟の母は微笑ましい、と見守っていた。青春はまだまだ先にある幼い二人がこのままピュアであれば良いんだけど、と願いながらお風呂を上がるカウントを始めた。
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