第2章 邂逅編
別の鍋にも同じくカレーが作られている。それは具だくさんの野菜ごろごろのカレーで子供達のとはまた違って見えるもの。残業になるらしく、遅くに帰ってくるという夫や自身の大人用として別の鍋で中辛のカレーを作っていたのだ。
一人分の大人のカレーを残し、深皿にご飯とカレーが半々に盛られたキッチン。四人がけのテーブルにコト、と悟とハルカのお子様用のカレーライスを。そしていつも座る席に自分用のカレーを並べて副菜なども並べていく悟の母。
悟もハルカも、足の着かない椅子でぷらぷらと脚を揺らし、美味しそうだとカレーを見て目を輝かして待っている。
キィ、と椅子を引いて食事を並べ終えた母が遅れて座って、両手を合わせて頂きます、と合図すれば、ふたりも日常的に口にしている頂きます!を元気に言葉に出して夕食を食べていく……。
「……どう?ふたり共、カレー美味しい?」
うん、と頬を膨らませながら頷く悟と、大きく頷くハルカ。
ハルカの家では子供が二人、それも姉妹。姉で慣れたというか、母の性格的にもここまで手を込んだカレーは作らない。
ハルカ自身、もしも人参を食べて『変な味がするから嫌い』と我儘を言おうものなら、野菜を作り送ってくれる祖母や祖父達が悲しむ。だから苦手でも頑張って泣きそうになりながら食べていたわけだが……。
人参らしい独特の味はしないから美味しい、といつも心の奥でカレーを嫌がってたのが、五条家のカレーライスが素直に美味しくてたまらない。スプーンを持つ手でカッカッと夢中で食べている姿を見て、悟も負けじとカレーを掻き込む。別にフードファイトをしようなんて縛りはしていないのだけれど。
……あまり操作を理解しきれていないゲームで、ハルカに負けたという事もあるんだろう。
よく食べる子供達を見て、微笑ましいと悟の母は半分ほど食べていたカレーのスプーンを一度深皿に置き、二人の元気なおかわり!に受け応えるのであった。
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