第2章 邂逅編
考えてみる。トイレは……除外しよう。遊んでる楽しい時間の拡大の他、いつもほぼ母と、時々父も含めた食卓に友達も居るのは嬉しい。嬉しいのだけれどその他の日常生活というと……。
「(それって、お風呂とか寝る時ってどうすんだ……?)」
保育園ではひとりひとりに家庭から持ち込まれた敷布団と掛け布団がある。
悟は持ち込まれた荷物にそんな機能性あるコンパクトな寝具が詰まってるとは思って居ない。眠るのに必要なものが詰まってるとしたらパジャマくらいだろう。
今、彼女が泊まりにやってきた、と知ったのだから母親にそんな素振りが見れなかったという事。父親は「みたらいさんとこの娘さん預かるのか」と母と会話してたし、母親も「うちに娘はいないものね~、悟と仲良しだし大丈夫でしょ」とふたりしてなんだか盛り上がっていたのを、ゲームをしている時に耳に挟んだくらい。布団の準備だとかそういう姿を見ちゃいなかった。
『……悟君?どうしたの?』
あまりにも長く考え込んでたのか、硬直する悟を心配そうに覗き込むハルカに動き出せと命令を食らったように心臓が跳ねる。
「あ、いや……うん…、とりあえず、上がれよ…」
──今は深く考えないでおこう。その時はその時の自分がなんとかしてくれる。
考えたら嬉しくって周囲に媚びへつらう犬みたいになる。ここはクールに格好良くしとかないと、と再び不機嫌よりな真顔で玄関から家に我先に引っ込んでいった悟。
そんな息子を見守りながら、母親はハルカに優しい表情を向ける。
「さっ、上がって。ハルカちゃん、背負ってる荷物も重いでしょ?」
入りやすいようにドアを広く開けて待てば、ハルカはぺこりと頭を下げて悟の母を見上げた。
『あ、ありがと……ございます』