第2章 邂逅編
母同士がハルカの荷物を受け取ったり、ハルカが悟の母にお菓子を『はいっ!』と差し出す所…、そして「ありがとうねーっ!」と自分の母が友達の頭を撫でている所をじっと見ている悟。
「それじゃ、うちの子をよろしくお願いします!」
「ええ、ハルカちゃんは確かに預からせて頂きました。明日はゆっくり戻ってきて~!」
少し慌ただしく、ハルカの母親が手を振って去っていく所を悟は我関せず、とぼんやりと見ていた。
そして少しその最後の会話に疑問を持つ悟。会話が少し変だと、それを母ではなくハルカにぶつける。
「……ん?オマエの母ちゃんどっか遠出すんのか?」
その疑問に頭をこてん、と傾けるハルカ。てっきり悟含めた五条家も自分達の家族が祖母・祖父の家に今日から明日に掛けて出掛ける……という事は、親達の連絡で知っていると思っていたから。
『え?お婆ちゃんところに私の家族、泊まって畑作業のお手伝いするから……だから私だけ悟君の家に来たんだけれど…』
「ん?泊まるって……ハルカは?家に親父さんとか残ってんのか?」
玄関先で首を傾げ合うふたり。悟の母は預かったハルカのお泊りバッグとお菓子を玄関先にと置いている。ハルカ自身か背負ってる小さなリュックサックは膨らんでいる割に重くは無さそうで(そりゃあ空気ばかりスカスカの駄菓子を詰め込んでいたりするからだ)荷物を預からなくても良さそう、と判断した母は小さな子供達の会話が途切れるのをドアを開いたまま待っている。
『ううん、私がこっちでひとりになっちゃうから、悟君のお家に泊まるんだって!』
そのハルカの言葉と、ニコー!とした笑顔に悟の表情は強張った。
彼もハルカと同じく長く遊べる、日を跨がない程度の"預かる"だと思って居たんだろう。部屋を片付けなさい、とは確かに言われた(そもそもそんなに散らかってる訳でもない)遊びに部屋に来るのなら普通に片付けるけど?くらいに思っていた悟。
「……は?(おい、ちょっと待てよ…)」
それは嬉しいのは違いない。友達同士のお泊りなんて絶対に楽しいだろ!そう、瞬間的に心踊っていた悟。しかし明日まで…、迎えに来るまでというと自身の一日のルーティンに目の前の笑顔の彼女が組み込まれるってわけだ。