第2章 邂逅編
幼いふたりは夢中になっていて頭上の会話が耳に入らない。明日どうするか、をある程度話し合い、詳しくは両家帰ってからお互い伴侶と相談しようとまで決めていた。
いつもの日中から夕方までの遊びよりももっと長い時間過ごせるという、日を跨ぐ預かるの意味を悟もハルカもこの時点では知らなかったのだ。
車に乗って車窓から見える限りに小さく手を振るハルカとそれをただ手を少し挙げて見えなくなるまで相手を見ていた。そうして車から見えなってそれぞれが我が家へと帰る。
ハルカはふんふんと保育園で流行っている魔法少女のアニメソングをハミングしながらソファーの上に座り、隣の姉のトワと絵本を片方ずつ持って覗き込んでいた。少しだけひらがなが分かりかけてきてるから読める文字を見つけては嬉しくなり、脚を左右にばたばたとさせている。
足をばたばたさせながらふんふんとご機嫌な妹のその明らかな態度の理由を姉は知っている。ハルカは明日、こっちに来て仲良くなった、遠い親戚の五条家に預けられるという事。
ハルカの姉のトワは五条家はいい一家だとは感じている。引っ込み思案な妹がこんなに変われたのは五条家の子供、悟がハルカの友達になったから。
今まで妹は髪色で馬鹿にされ、引越し前のあの閉鎖された空間では上手くやって来れなかった。だからこそ悟には感謝したい所であるが、悟自身はハルカのみを受け入れるようなタイプだと気付いてからは、自身が悟と仲良くなるには相当の時間が掛かるだろうし、なによりもふたりの友人関係に割り込む程ではないとは思っている。
妹と違い姉のトワは髪色も日本人なら一般的な色であり、内面的に明るいタイプであるハルカの姉は悟と仲良くしなくたって他に友人もいる。この地もそうだが引っ越す前の子達にも泣かれて「元気でね!」と見送られたほどに誰とでも仲良くなれているのだから友人関係で困ることは無かった。
育んだ友情を引き裂いた、とも思わないしこっちではもっとたくさん友人も出来、遊ぶ施設も豊富でむしろトワ自体も「田舎だからこそああも差別があったんだな」くらいに思い出し、かの友人達もいつかはあそこを出た方が良いんじゃないか?と気持ちのどこかで思いを馳せる程度にはそこそこ仲は良かった。