第1章 入れ替わった…?
「あの…!まだ分かりませんか!」
「…ああ、すまない。たしかに、明美とは違うようだな」
「わ、分かってもらえたなら…いいですけど…」
赤井さんの謎の微笑みに、こっちはくらりと目眩を起こしてしまいそう…っていうか心臓が破裂しそうなのに!
素知らぬ顔で立ち上がった彼は元いた場所に戻り、コーヒーに口を付けると小さく溜め息を吐いた。
「…やはり明美は死んだと考えるのが妥当だな……」
「おそらく……もし私がいた世界に身体が飛ばされていたとしても、助かる状態ではなかったと思います…」
「そうか…」
何処でもない何処かの空間を見つめる今の彼の表情から感情は読み取れないけれど、きっと彼女の死を受け止め哀しんでるんだろう……今度は胸が痛くなってくる……
「でも赤井さんのせいじゃないです、悪いのは全部、あの組織です…」
「そうだな…」
「私、いつまでこの世界にいられるか分かりませんけど、できることがあれば何でも協力します!だから…だから…」
「ああ。そうしてくれると助かるな…」
「あの…頑張ってくださいね!」
「当然だ」
……自信有りげに“当然だ”と言った彼を、心底格好良いと思った。
“しばらくは日本にいるから、これからも情報交換の為にたまに会おう”と言われ、電話番号を交換して。
コーヒーを飲み干した赤井さんは工藤邸から帰っていった。
スマホを手に入れておいて本当によかった。あの赤井さんの番号をゲットしてしまった。
このままこの世界に居れば、いつか他のキャラにも会えたりするんだろうか。
いやそれにしてもまじでかっこよかったな……(棒読み)
テーブルの上を片付け、キッチンの流し台で彼の使ったコーヒーカップを洗おうとして、ふと、コレを洗ってしまうのって勿体無いのでは?って考えが浮かんできて……一人で笑った。
久しぶりに笑ったかもしれない。