第6章 好機逸すべからず
「それにしてもさっきのは…生きてる心地しなかったですよ…」
「それはすまなかったな」
少しもすまなさそうに見えない赤井さん…でも彼にももう張り詰めたような緊迫感は見られない。
通っているルートは違うけど、神奈川県内を再び西に向かって走り出した車の中…
とりあえずコナンくんへメッセージの返信を終えた私はすっかりリラックスモードに入ってしまっていた。
窓から見える夜景はキラキラしてて綺麗だし、無茶な運転さえ無ければこれは元々乗り心地の良い車であって快適だ…
「メールは終わったか?」
「ええ!はい。大丈夫です」
“何故バーボンかあそこに居たのか”、“ウォッカは結局の所静岡に来ていたのか”とか…二人であれこれと考えたけど答えは分からないまま…車は静岡県近くまで来ていた。
「ボウヤと宮野志保の様子はどうだ?」
「…まだ高速道路の上じゃないですか?運転手は安全運転で向かいそうな人ですし」
「そうか……では何処か行きたい所はあるか?こちらの方面で」
「富士山は夕方見れたし…熱海とか伊豆とか?でももう夜中だしなぁ…赤井さんは?」
「熱海は…おそらく行ったことがあるな、もう10年程前だが」
「あっ…!?そうですよね!?知ってます!崖から車ごと落ちた強盗犯を捕まえたやつじゃないですか!?」
「おい…そんな昔のことまで書かれていたのか?」
「はい!重要な出会いの話なので!実はその時に…赤井さんって、あのコナンくんに会ってるんですよー!7歳くらいの男の子に会いませんでした?」
「たしかに……ああ…そんな年頃のボウヤがいたな。ホームズの弟子、だったか」
「そう!その子が工藤新一くんで、今のコナンくんなんです!」
「…俺と彼とのファーストコンタクトだった訳か…」
思わぬ話の展開に一人テンションが上がってしまい。“行きましょう!熱海!”なんて言い出し、行き先は決まったものの…
時刻は既に22時を回っている。こんな時間から行っても何もないかもしれないけど…どうせ東京には戻らないのだ、何もなければまたそれから考えればいい、ととりあえず熱海を目指した。