第6章 好機逸すべからず
準備を整えた私達は、コナンくん達より一足も二足も早く、静岡方面へ向かうこととなった。
コナンくんには、“ありがとう!思い出した!その女は組織の人間では無いけど、悪い奴なのは間違いないから気を付けて!それから、今夜はもっとすっごく驚くことが待ってるから…それを知ったらまた連絡ほしいな!頑張ってね!”とメッセージを残しておいた。
ウォッカが電話を掛けてきた時刻、その際に教授がもしも存命で在宅だったなら、ウォッカはその足で教授を消しにやって来るのではないか…と赤井さんは踏んでいるよう。
つまり、ウォッカも今夜静岡に居る(もしくは既に居る)可能性が高く、教授の自宅の最寄りの高速道路のインター付近を張っていればウォッカ、運が良ければジンも現れるはず、そして見つけ次第、後を尾ける…という算段だそう。
「ジンの秘密の一つでも暴ければ最高なんだがな…」
「あの…一応聞いておいていいですか?」
「どうした」
「今回の作戦が失敗する場合の最悪のパターンは…?」
「……今回に限らず常に最悪のパターンは自分達の死だ。だが君によれば、俺はこれからも生きていて、組織と戦うんだろう?」
「それは流れ通りにいけばの話です…」
「物語の流れは変えていない筈だが」
「書かれてなかった部分は知りませんよ…」
「心配要らん…きっと上手くいく」
じゃああの大量の弾薬は要らないのでは!?と言いかけたものの、自信ありげに微笑まれてしまい(しかもそれがカッコイイから尚更タチが悪い)、それも引っ込んでしまった。
「最悪の事態を想定しておくのも重要な作業のひとつだ。俺だって何も考えていない訳ではない」
「そ、そうですか…」
どうも心の内を読まれている気がして若干悔しい…けど仕方ないか、相手はあの赤井さんだ。隠し事が通じる人じゃないだろう。
車は最寄りのインターから高速道路に乗った。本線に合流して間もなく、走行速度が格段に上がって、正直ギョッとした……車のシートの端を握り締めたまま、しばらく動けなかった。
先に作戦自体を聞いた時はあまり怖いとも感じなかったのに…実物の盗聴器や弾薬を目にしたせいか、少し前から変な胸騒ぎが酷くなってきている。
あれもこれも、心配事は山積みだけど…とにかく今はこの作戦の成功と赤井さん(と自分)の無事を祈るしかないんだろうか。