第6章 好機逸すべからず
そうして私達は、つい先刻車を乗り換えた倉庫へ再び戻ってきた。
この倉庫は赤井さん達FBIの、言わば“秘密の部屋”らしい。
薄暗くガランと広い空間の中には、沢山の大きな木箱が壁際に積まれていて。赤井さんはそれらのいくつかを脇に退け、目当てと思われる箱を両手で持ち上げると、地面にゆっくりと下ろした。
箱の中からは見たこともない器具や機械が取り出される。
「それ何ですか…?」
「盗聴器の類だ」
「へえ…実物って初めて見ました…」
彼は盗聴器らが入っていた木箱を元の位置に戻すと、次はまた別の木箱を地面に下ろした。その中から取り出されたのは、サイズは小さいものの、重そうな何かのケース。
赤井さんがそのケースの中から金属製の光る物体を摘み出し、こちらに見せてきた…瞬間、背すじに寒気が走る。
「さすがにコイツは知っているだろう?」
「銃弾、ですよね…」
「そうだ」
……ライフルを構え片目を瞑り敵を狙う彼の姿が脳裏で自動再生される……忘れてた訳じゃないけどこの人、超一流の狙撃手でもあったんだった。
「そ…そんなに沢山…使うんですか?」
「おそらく今日使う事はないが…拳銃や手榴弾を持った相手に丸腰で挑むのもおかしな話だろう…」
「それは…そうですけど…赤井さんとウォッカがドンパチやる展開なんて聞いたことないですよ…」
「今の俺はまだ物語に登場する前なんだろう?」
「はい…」
「なら今の俺には何が起こっても不思議ではない」
「たしかに、そうですけど…」
ジャリ…と重そうな音を立てる銃弾のケースを2つも赤井さんは車に載せた。
「さん、銃を撃ったことは?」
「な、な、な!無いです!」
「見た事くらいはあるか?」
「映画とかでなら…」
「まあ、ここは日本…銃撃戦にはならんだろうから…それ程知識は必要ではないかもしれんが…」
「…あの…ここは確かに日本ですけど、私の知る限り銃も爆弾もよく使われてましたよ…」
「ほう…ではもう1ケース積んでおこう……あとは防弾ベストだな…君も一着持っておけ…コレを使うといい」
「え…できれば着ることなんてないといいんですけど」
また別の木箱から出されたいわゆる防弾チョッキ…手渡しで受け取れば、思いの外ずっしりとした重さに驚いた。捜査官はこんなの着て動いてるのか。すごい。