第6章 好機逸すべからず
しかしコナンくん御一行をよくよく見てみると、見覚えのない男児が一人混ざっていることに気付く。
あの子は誰だったか…記憶をなんとか手繰り寄せようとしていると、スマホにメッセージが届く。すぐに開けば、“同じ小学校の子のお兄さんが行方不明みたいで。そのお兄さんを探しに行くことになった、灰原も一緒だ。黒ずくめの組織には女もいるのか?つばの広い黒い帽子を被った女って知らない?”と、コナンくんからだった。
おかげで記憶が繋がった。この後彼らに起こる事…ハッキリとした光景が頭にいくつも浮かび上がってくる。
あの男の子の兄はたしかニセ札製造犯に捕まってて…この後コナンくん達はお兄さんを助けて犯人逮捕に貢献して…
更にその後が…暗い夜道だったと思う…哀ちゃんがコナンくんに自身の正体を明かす衝撃のシーン。
そして哀ちゃんから話を聞き、彼らは明美さんの恩師の元を尋ねることに…
「思い出しました!あの子達、今夜静岡に行きます!組織のデータが入ったフロッピーを回収しに…そこにウォッカも絡んでたはずです!」
「ウォッカか…」
「静岡に、明美さんがお世話になった大学の先生のお家があるんです…“ひろたまさみ”って名前の」
「ほう…」
「で、たしか…ウォッカがその先生の家に電話して留守電残してるんですよね、伺いたいって」
「…組織はその教授を消そうとしている、ということか?」
「そのつもりだったんでしょうね…でも、その前に全く別の人に殺されちゃうんです…学生さん思いの優しい先生だったのに…」
「…まさかとは思うが…さんはその教授を助けたいのか?…無駄に終わるぞ」
思考が一瞬停止してしまった。見ず知らずの人とは言え(おそらく)善良な人が殺されるのを分かってて放っておくのって、いかがなものなのか…
「…助けられたとしても…組織が直接手を下しにきます…ね?」
「そうだ、どちらにせよ教授は消される」
「あー…それに…助けたことで今夜そこに向かうコナンくん達と組織の人間が鉢合わせでもしたら…もっと危ない、か…」
これまでも、記憶にある事件を事後にニュースで目にしたことはあった、でも済んだ事だし、そして全て他人事だと思ってた。
心が重く沈んでいく…これからこの先に起こる悲しい事件を思い出す度に、こんな気持ちになるんだろうか…私には助ける術がない。