第6章 好機逸すべからず
ノートの在り処を探しリビングのあちこちに視線を走らせる。でも、元々家具自体が少ないこの部屋、それが無いことは割と早い段階で明らかになり。
キッチンもトイレも洗面所もザッと見たけど、見当たらず。
となると…私の部屋は違うだろうから赤井さんの部屋にあるのか…でも部屋の主が留守の間に勝手に入るのもいかがなものかと思うし…
まるで朝の時と同じように、彼の部屋の前で頭を捻る……と、リビングのテーブルに置きっ放しだった自分のスマホが鳴り出した。電話だ。
小走りでリビングに戻りスマホの画面を見れば相手はコナンくんだった。時間的に…お昼休みか。
「もしもし!」
「もしもしさん?転校生って灰原っつー茶髪のツンケンした女の子のことか?」
「そうそう!わー!来たんだね!その子と、多分今日かな…遠くに出掛けることになると思うんだよね…」
「だからその遠くってドコなの」
「それを、私も知りたいの…」
「その場所には何があるの」
「…何かあるかもしれないから、知りたいんだよね…」
「……そんなに知りたいならさんも一緒に来れば?」
「それが出来ないから頼んでるの…それから悪いんだけど、私の事はまだその女の子には話さないでね…」
「ハァ?…あの灰原ってヤツ、何者なんだよ…」
「それはもうすぐ分かるかと思います…」
「……そーかよ。また連絡すればいいんだな?」
「悪いね…お願いします!」
ブツッと一方的に切られた通話。コナンくんは大層イライラしてるご様子だった。申し訳ない…思わず声が出る。
「ごめんね、コナンくん…」
「一人で何を謝っている?」
スマホ画面を見つめながらボソッと呟いた独り言は、いつの間にか帰ってきていた赤井さんにバッチリ聞かれてしまっていたようだ。
「あ!赤井さん…おかえりなさい…志保ちゃん、コナンくんと接触したみたいです」
「そうか」
「それでまあ…出掛ける場所をまた連絡してって頼んだんですけど“知りたいなら一緒に来れば?”とか“灰原って何者なんだよ”とか聞かれちゃって…何も教えてあげられなくて…」
「…一緒に行けばいいんじゃないか?」
「っ!?私もですけど、赤井さんもまだ志保ちゃんには会わない方がいいんじゃないですか?」
「顔を合わせるつもりはないが、尾行はできる」
「なるほど…」