第6章 好機逸すべからず
「何がおかしい?」
「すみませんっ!別に何も!お皿片付けますねー!」
「ああ。美味かった。皿くらい俺が洗うぞ」
「ええっ!?赤井さんにお皿洗いなんてさせられませんよ!」
「では俺は洗濯でもするか」
「それはもっとダメです!座っててください!」(下着を見られたくない)
やれやれ…と煙草に火を点けた赤井さん。それでいい。とりあえずシンクにお皿を持って行き、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出す。ちょっと迷ったけど中身をグラスに注いで、テーブルに持っていった。
「どうぞ」
「…わざわざ洗い物を増やしたな」
「私が洗いますから、いいんです!」
またやれやれと言わんばかりの表情を見せる彼をそのまま放置し、キッチンへ向かった。
皿洗いを終え続いて洗濯機を回そうとしていると、突然赤井さんが背後から現れる。
「少し出掛けるが、一緒に来るか?」
「うーん…洗濯物あるし、まだお化粧もしてないんで…」
「化粧などしなくても大して変わらんだろう」
「全然違います」
「…そうか?それなら一人で行ってくるが…俺が帰ってくるまで、絶対に家から出るなよ、誰か訪ねてきても決して家には入れるな」
「子供じゃないんだから……でも、はい、分かりました。赤井さんも気を付けて行ってきてください」
「ああ…」
ひらりと身体を翻し、彼は出掛けていった。
メイクをして、軽く部屋の掃除をして、洗濯物も干せば、もう特にする事もなくなって。
一息つこう、とコーヒーを取りに冷蔵庫へ向かえば、先程赤井さんにコーヒーを出したグラスが洗って伏せてあることに気付き…自然と笑みが溢れた。自分で洗ってくれたみたいだ。そのグラスを軽く拭いて、その中に今度は自分のコーヒーを注いだ。
テーブルに着席し、コーヒーをひとくち…さて今から何をしようか…
……思い出した。
“大事なこと”、忘れてた。昨夜張り切って書き始めたこの世界の年表ノート…どこにしまったんだったか。いや、しまった記憶もない。出しっぱなしだった可能性が極めて高い。
赤井さんはこのことを言ってたのかも……
帰ってきたら怒られる……!?