第1章 入れ替わった…?
これは居留守を決め込むべきか、会うべきか……ただ、ものすごーく赤井さんと喋ってみたいのも事実。
意を決して、通話ボタンを押した。
「はい…」
「突然押し掛けてすまない、少し家主の方と話がしたいんだが」
「あの…家主は不在です…」
「なら君で構わない。家に入ってもいいか?」
「は、はい……今開けます」
画面越しでも彼がイケメンなのは言うまでもなく…身体に響くような低い声もやっぱり素敵……本当に赤井さんはそこにいるみたいだ。すごすぎる、この世界。
玄関の扉を開け、ドキドキしながら彼を招き入れ、リビングに通した。(赤井さん、背もすごく高くて!ちょっと怖いけど、本当にカッコイイ!)
彼をソファに座らせ、コーヒーを入れに一人キッチンへ向かう。
たしか赤井さんは、ブラックコーヒーを好んでたはず。
砂糖もミルクもスプーンも付けずに、私は出来上がったコーヒーを彼の前に置いて、向かいの席に着いた。
「それで…お話っていうのは……?」
「まず、だが…君は随分不用心だな…見知らぬ人間でも誰彼構わず家に上げるのか?」
「っ!…いつもはそんなことないんですけど!ちょっと、事情がありまして……」
「どんな事情だ?…例えば、家に上げる前から俺が誰だか知っていた、とか…」
「…なんで…そう思います?」
「まず君は…いきなり訪ねてきた俺の名前も身分も聞かない。それに、俺がコーヒーに砂糖を入れない人間だと知っていたようだしな…」
「あー…なるほど…」
「いつまでシラを切るつもりだ……さっさと白状しろ……お前、明美なんだろう?」
「……っ、」
淡く期待を抱いていたのとは全く違う空気が流れ出し、戸惑う……
“明美”とはおそらく私と身体が入れ替わった“宮野明美”のことだろう。
赤井さんはもしかしすると……遺体の見つかっていない元恋人(たしか別れたばかり)を探してるのか……
私は宮野明美ではないし、彼女はおそらく死んでる。
返す言葉に迷い黙っていると、赤井さんが続けて話し出す。
「お前、俺のせいでジンに消されそうになったんだろう?上手く逃げたようだが……すまなかったな……あれからお前が何処かに雲隠れしたんじゃないかと思ってこの二週間必死に探したぞ……最近この辺に現れた怪しい人間がいないか、片っ端から」