第5章 陶酔、溢れる本音
洗面所でバッタリ出くわしてしまった後は、赤井さんの声は聞いたけど直に顔は合わせないまま…そそくさと就寝準備を整えて布団に入った。
でも中々寝付けなくて、明日からどうやって赤井さんに接するべきか…グルグルと思考を巡らせ考えていた。
普通の男性として、警戒心を持って…?
そんな風に考えたらそもそも同じ家になんていられませんが。
早く引越し先を見つけよう。明日は不動産屋に行こう…
明日……あ。
スマホを手に取り、メッセージアプリを開く。送信先はコナンくんだ。
“夜中にごめんね。コナンくん、近い内に転校生の女の子とどこかに出掛けることになると思うんだけど、行き先が分かったらスグに教えて!行く時は気を付けて行ってきてね!”
おそらく明日か明後日…哀ちゃんと出会うであろう彼は、彼女の正体を知ったら驚いて絶対私に電話してくるだろう、と踏んではいるものの、念には念を、だ。
コナンくんが哀ちゃんとハカセと共に向かう先には組織の人間が絡んでいたはず。
悔しいのが、自分の記憶が曖昧で、それが何処だったかを思い出せないこと……
こっちの世界に来るなんて分かってたら…単行本をあと100回は読み返してただろうに。記憶が完璧ならもっともっと赤井さんやコナンくんの役に立てるのに。
でも赤井さんは、もし組織の人間を見つけたら…本当に尾行とか…するんだろうか。そしてそこには私も同行しているんだろうか?
万が一の事態になったら、私は彼の足を引っ張らずにいられるだろうか。
もう一度スマホを握り直し…何と打つかしばらく指先を迷わせた後に、検索窓にまずは“スパイ 心得”と入力し、インターネット検索を行った。
“スパイのいろは”や、“尾行のコツ”なるページを開き、読み進めれば…なるほど、自分には足りないものがありすぎる事を痛感させられた。
難しい語句の並ぶベージを見つめている内に…眠りに落ちた。