第5章 陶酔、溢れる本音
「うぅ…あれ…酔ってきた…かも?」
「今日はこの辺にしておくか」
「…まだ飲みたいですー」
「まずは試しながら飲むんじゃなかったのか?また潰れられたら俺が迷惑だ」
「ですよねー…ほんと、すみません…」
「すまないと思う気持ちがあるなら、その辺にしておけ」
トイレから出てきたさんの足取りはフラついていた。ヨロめきながら歩き、テーブルまで辿り着きはしたが、椅子に座った姿はまるで身体の芯を失っているようにも見える。
目元も普段と違いとろんとしていて…これは“可愛い”と言うよりも、“心配”だ。この先また俺がいない所でこんな状況になったら…
仕方なくキッチンの冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し、キャップを開けて彼女に渡す。
「とりあえず飲め」
「ありがとうございますー!“迷惑だー”とか言うけどやっぱり赤井さんって優しい!頼りになるー!」
「俺はそんなに大した人間じゃない」
「大した人間ですって!実際に会ってもっと大好きになりましたよ…」
「……いいから早く飲むんだ」
「はーい!いただきますっ」
ちゃんと水が嚥下されている様子を、内心溜め息を吐きながら見届ける。
女が男と二人きりの時に“大好き”などとは言わない方がいいと思うんだが。今は諭しても無駄に終わるか。
まあ、日本人の“好き”は“like”か“love”か判別が難しいのも確かだが…
おそらく俺もスコッチもバーボンも、彼女にとっては“like”なんだろう。彼らの事を卑下している訳ではないが、横並びに同じだと言われるのは何故だか悔しいものもある。