第5章 陶酔、溢れる本音
それ程大きくはないテーブルに、向かい合わせに置かれた椅子が2脚。
私の座る向かいの椅子に、足を組み、背もたれにもたれ深く座っている赤井さん。片手でウイスキーの入ったグラスを持ち、時折その中身をゴクリと飲み下している様は、物語の中の彼に抱いていたイメージと寸分違わない、“これぞ赤井秀一”といった雰囲気だ。
そんな彼を目の前にして、ちょっとばかり興奮気味の私…
「やっぱり赤井さんって赤井さんですね!」
「…当然だ、俺が赤井秀一なのだから」
「分かってるんですけどね…なんかすっごい良い物見れてる気分です…」
ちなみに自分の口元がだらしなくニヤけているのも自覚している。
「酒を飲みながらそんな顔で相手を見つめていたら、男を勘違いさせるぞ、気をつけた方がいい」
「大丈夫です!多分こんな顔になっちゃうのは、赤井さんくらいですから!あ…でももしかしたら沖矢さんとか安室さんでもなっちゃうかも」
「オキヤは俺のことじゃなかったのか?それに今もう一人“アムロ”と言ったか」
「あ…」(またやってしまった)
「俺が本気になる前に正直に話した方が賢明だぞ……さんには悪いが、君を無理矢理吐かせることぐらい造作も無い…」
……本気モードの赤井さん、ちょっと見てみたい……痛いこととかされないなら、それもそれで面白そう……手にしたグラスを握り締め、ジッと赤井さんの目を見る…
「でもさすがにまだそれは言えません!」
「何故そこはそんなに頑ななんだ…」
「だって…教えたらこの先が変わっちゃうかもしれないから…」
「……では聞くが君の知るこの先の未来は平和なのか?」
「平和なのかな…順調に進めば、黒の組織は解体されて、赤井さん達は報われるはずです…」
「ここは勧善懲悪が定番の物語の中…ということか…」
「そうそれ!そうなんです!」
「だが未来が変わるとしても、何も悪い方向にばかり変わるとも限らんだろう?」
「たしかに…っていうかそもそも私がここにいる時点で既に変わってるんですけどね…」
「そうだ。では教えてもらおうか」
「……ダメです」
「…そこまで拒むなら仕方ない。少々荒っぽくいかせてもらおうか」
「っ…?」
妖しい笑みを口元に浮かべ、ガタリと音を立て椅子から立ち上がった赤井さん。部屋の中を見回し、何かを探しているよう……