第5章 陶酔、溢れる本音
結局赤井さんと二人でスーパーにやって来た。怪しい気配なんてこれっぽっちも感じないけど。(それはただの私の勘だけど)
カートを押しながら目当ての野菜にお魚、お肉をカゴに入れていき、店内を回って……お酒コーナーの脇を通り過ぎようとした時に、ふと思った。
「赤井さんってそういえば全然お酒飲んでないですよね?」
「…俺は酒好きだとでも書かれていたのか?」
そう、作中ではウイスキーを好んで飲んでたはずの彼なのに、彼の家にはアルコールの類が一切無いのだ。
「酒好きっていうか…ウイスキー飲んでる描写が何度かあったから、好きなんだろうなって思ってたんですけど」
「…まあ…最近は……そうだな……買って帰るか…さんも飲むか?」
ちょっと言葉を濁された気がしたけど。とりあえずは突っ込まないでおいた。
「……はい。私、どれくらい自分がお酒弱くなってるのか試しながら飲んでみたいんですよね……」
「そうした方がいい…この前のような酔っ払いはもう勘弁してもらいたいからな」
「……善処します」
赤井さんはウイスキーが陳列された棚を物色し始め、瓶を1本手に取りカゴに入れた。そのお酒のラベルを見てみれば……スコッチだった。
「へえ…今はスコッチなんですね…」
「また“今は”か…未来の俺は何を飲んでいる?」
「さあ…なんでしょう!」
「それくらい教えてくれても構わんだろう」
「教えたら赤井さん、わざと違うやつ飲みそうじゃないですか…」
「どうだろうな…」
(少年マンガだし)おそらくハッピーエンドを迎えるはずの“この世界”の未来を大きく変えてはいけない、もしも流れを変えてしまったら、コナンくん達は幸せになれないかもしれない……
って思ってたけど、そもそも私がココに飛んできた時点で少しは変わってしまった“この世界”……小さな事くらいなら変わってもいいのかもしれない……
でも赤井さんが後にスコッチ党からバーボン党に変わることは、内緒にしておいた。(何がキッカケで変わったのかとか、知れるものなら知りたいし!)
私も自分の缶ビールとアルコール度数の低い缶チューハイを2本ずつカゴに入れ、レジに向かった。