第4章 思い出に浸る
“シェリーが逃げた”と聞いた昨晩深夜から、僕は彼女を探し都内を回っていた。しかし何の情報も掴めないまま朝になり…
仮眠を取って、次は宮野明美の住んでいたマンション付近を探る為、その近くまでやって来た。
マンションからの最寄りと思われるコンビニに着き、一旦トイレを借り、済ませ、ペットボトル飲料を棚から取る。購入ついでに、店員にシェリーについて聞き込みもするつもりだ。
(僕はシェリーと面識は無いが、彼女の顔や身体的特徴は昨日ベルモットから送られてきた資料で確認済みだ。彼女の顔は、母親によく似ていた…)
レジへ向かえば、先に会計をしていた若い女性が目に留まる。
背格好はシェリーと似ていなくもないが……ちらりと見えた横顔は、シェリーとは全く異なる別人だった。
ただ、彼女の購入していた物品が非常に気になった。缶コーヒーと、タバコ……どちらもあの赤井秀一が好んでいたものと同じ銘柄だったのだ。偶然か。
店内と駐車場の車を見るが、赤井の姿は無い。
彼女は会計を済ませるとコンビニを出て徒歩でどこかへ向かっていく。
続いて自分の会計も済ませ、シェリーの顔写真を店員に見せるも…空振りだった。昨日から何度目だろう、小さな溜め息を吐きながら、外に停めていた自分の車に乗り込んだ。
宮野明美の住んでいたマンション方向へ車を走らせれば、先程の女性が歩道を歩いているのを確認。近所の住人なのか。その女性を追い越し……宮野明美のマンションの前も通過した。
しばらく見晴らしの良い所からマンション付近を眺めていたが、特に収穫は無く。
切り上げて次は宮野医院のあった場所へ向かう為、また車を走らせた。
宮野医院のあった辺りは、自分の生まれ育った家があったエリアでもあるから土地勘はある、しかし、あるだけに用心しなくてはいけない……車は離れた所に止め、歩いて宮野医院のあった場所へ向かった。