第4章 思い出に浸る
せっかく二人揃って小綺麗にしたのなら、食事も小綺麗な店に行こう、ってことで赤井さんが連れてきてくれたのは、お洒落な外装のフレンチレストランだった。(全く彼のイメージに無かったから、提案された時は驚いた)
店舗前の駐車場(今日は普通サイズの車だから駐車場も余裕!)に車を止めると、赤井さんはサングラスを外し……代わりに黒い縁の付いたメガネを取り出し、掛けた。
これもこれで……かっこいい。メガネ男子が特別好物って訳でもないけど、これはかなりイイかも。
一瞬、沖矢昴の顔が頭を過ぎったけど…また全く別物だ。
やっぱりイケメンはメガネかけてもイケメンなのか……
じっと彼の顔ばかりを見ていれば、赤井さんの口元がニヤリと弧を描き、ハッとする……
「どうした、そんなに俺ばかり見つめて…さては見惚れていたな?」
「……別にそういうことでいいですよ、カッコイイって思ってたのは事実ですから…」
「そういう君も殊の外可愛いがな」
「っ!ちょっと!」
頭をクシャクシャと撫でられて、おそらく髪型が崩れた。
車内のミラーで髪を直してから車を下り、店に入った。
少々ソファで待たされた後、恭しい接客態度の店員に案内されたのは分厚いテーブルクロスの掛かったテーブル席。その上にはこれまた分厚そうな紙ナプキンと、いくつものフォークやナイフが並べて置かれている……ちゃんとしたお店すぎて無意識の内に背すじが伸びる。
こんなお店で食事だなんて、今日は何か特別なことでもあったんだろうか?だって私だったら何かの記念日や誕生日でもないと選ばないお店だ。
「赤井さんって普段からこういうお店でも食事するんですか?」
「たまにはな」
「へえ…」
冷蔵庫の中がほぼ水とコーヒーだけだった人とは思えない。でも聞けば、赤井さんは美味しいものを食べるのは普通に好きなんだそう。ただ、自分で作る気は全く無い、と。食べたければ外に行けばいい、ってことらしい。
よし、(自信はないけど)今夜こそは赤井さんに手料理を振る舞おう!と密かに意気込みながら、久しぶりの高級ランチを楽しんだ。昼が洋食なら、夜は和食か中華だな。