第1章 入れ替わった…?
翌日。ちゃんと寝て起きたのに、未だに夢の中だった。
とりあえず有希子ママ(新一くんのお母さん)の私物で身支度を整え、現金を有希子ママの鞄に入れ、意気揚々と米花駅周辺に繰り出し…
化粧品や洋服、下着を手に入れ、両手に紙袋を引っ提げて工藤邸へ帰宅した。
果たしてこんなに必要かどうかも分からないけど…色々買っちゃった。
って思ってたのに。
夜になり寝て、また朝になり起きて…それらを繰り返しても、私がこの夢から覚めることはなかった。
これは“夢”ではないのかも……私はどうやら……“名探偵コナン”の世界の住人になってしまったようだ。
まさかこんなことになるとは……
「さん、全然パッと消えないじゃん」
「ね。私が一番ビックリしてる…」
なんとあれから二週間近くが経ち。工藤邸での生活にも、なんだか慣れてきてしまった。
現在コナンくんが来ているのだが、コーヒーを入れるのはもう私の役回りだ。
「ちょっと言い辛いけど…さんは、もう元の世界には戻れないんじゃない…?」
「そうなのかもね…まあ、戻れた所でどうせ死んじゃうけど…」
「ガンで入院してたんだよね…?」
「そうそう。だから戻れなくてもいいっちゃいい…」
「今身体の調子は?大丈夫なの?」
「不思議なことにね、多分病気は治ってると思う。毎日調子よくってさ…」
「それならいいけど……でもずっとコッチにいるんなら、大変じゃない?戸籍とか、色々…ないんでしょ?」
「それコナンくんが言うー?」
「俺は小学生だからなんとかなってんだよ…あるだろ?幼少期は親戚に預けられてたとか……でもさんはいい年してんだから、ずっとこのままじゃ…」
「やっぱマズいかな?」
「多分な…いい加減ウチの両親にも隠し通せなくなってくるだろーし、その辺も手を打たねぇと……」
「そうだよね……最近いろいろ考えてはいるんだけど……うーん……私も、いつまでもコナンくんにお世話になりっぱなしなのは悪いなっては思ってるんだよ……」
彼にそう言った言葉は本心だった。これは“夢”だと思ってたから、色んなことに甘えて甘えて甘え切ってしばらく過ごしてたけれど、この世界での生活が続くなら、このままではいられない。