第1章 入れ替わった…?
それからたっぷり彼と喋り込んだ。
怪しい人間じゃないと分かってもらうのには苦労したけど……
私から見たこの世界は、コナンくん達からしたらナイトバロン(彼の父、工藤優作の有名ミステリー小説)の世界のようなものなんだと伝えた。
作中で“黒ずくめの組織”と言われる奴らは悪い奴らであり、私はいかにコナンくんを応援している身なのかを伝え……
3杯目のコーヒーを飲み干す頃になって、やっと信用してもらえたようだった。
彼の中で私は“未来に近い所から突然やってきた女”と位置付けされたみたい。
しかし一向に夢から覚める気配がない。これ以上夢が続くのなら…自分の身ひとつでこの世界にやってきた私には、いろんなものが無い。
「あのねコナンくん……ひとつ、相談があるんだけど……」
「何?」
「私、この世界には居場所が無いみたいでさ…」
「居場所…?」
「寝泊まりする家、っていうか…衣食住全部…」
しばらく考え込んだ彼は……私を歓喜させる言葉を口にする。
「……ココに泊まれば?母さんのモンも色々あるし、困んねーとは思う」
「いいの!?」
「俺も、組織の情報とか色々知れたし……さんにはまだまだ聞きたいこともあるしさ……」
「ほんとーっ!やったー!ありがとうー!」
(見た目だけ)小学生の手前で、私は年甲斐もなく喜んだ。
「でも父さん母さん達に知れたらアイツら大騒ぎしそーだから、とりあえず内緒な、隣の阿笠博士にもだ」
「分かった。こっそりする。ずっとカーテン閉めとくよ…」
その晩、工藤邸のパソコンをお借りして、この世界のことを調べてみた。
まず、例の10億円強盗で盗まれた紙幣は、記番号を控えられていなかったことを確認し…(つまり使い放題だ、犯罪だけど)
本日某港で真新しい大量の血痕が見つかり、その血はヒト一人の致死量を優に超える量なのに何故か遺体が無い、という報道にも触れた。
それから、工藤新一が過去に事件を解決した記事を読んで……
ここ、米花町の地図も検索し、工藤邸の周りはもちろん、米花駅周辺の地図もプリントアウトした。こんな事態になって気付いたが、スマホが無いって不便だ。
最後に“名探偵コナン”と検索してみたけれど……検索結果に私のよく知ってる情報は、ひとつも出てこなかった。