第4章 思い出に浸る
下りる予定の駅に到着し、ギリギリのタイミングで車両を下りた。
駅舎を出て周りを見れば……見覚えのあるドイツ車が見えて。その瞬間、全身の力が抜けそうなくらい、ものすごくホッとした……
でも早足で車に近付きドアを開けようとしたのと同時にフリーズしそうになる。(悪い意味じゃない)
運転席に座ってる男性、サングラスをしてても赤井さんだとは認識できてたけど、ニット帽も被って無ければ、ジャケット姿になってたのだ。
今まで知ってた赤井さんとは全く雰囲気が違うけど、これはこれですごくかっこいい……!
勢い良くドアを開け、サッと乗り込んだ。
「迎えに来てくれてありがとうございました!……私…尾けられてない…ですよね?」
「おそらく大丈夫だが……彼にどこか触られたり抱き着かれたりはしていないか?」
「さ、さわ!?だき!?無いです無いです…」
「念の為確認するぞ」
「っえ!?」
隣から赤井さんの手が伸びてくるなり、私の服の袖や裾、襟、ポケットを無遠慮に探られる。一体何事か。さっきとはまた違うドキドキで胸が煩い……
「鞄を貸せ」
「は、い…っ」
続いて私のカバンの中まで赤井さんは探っていく……カバンの中身をじっくり見られるのも、服を触られるのと同じくらい恥ずかしいんだけど……拒否できる雰囲気ではなかった。
「無いようだな」
「…何が?無いんですか?」
「盗聴器や発信機だ」
「あ…そういうこと……」
そんなものを付けられた感覚なんて全くなかった、と思うけど…これもアテにならない素人の勘だ。コナンくんだっていつも上手く大人に発信機着けてるしな……
なんというか…勝手にドキマギして損した気分だ。
赤井さんがギアを操作し、車は走り出す。
「それで…バーボンとは何があった」
「公園のトイレを出たら、突然後ろから話しかけられたんです…」
会話の中身を事細かには覚えていないけど、明美さんの家の近くのコンビニで私が買い物してる所を彼に見られていたこと、彼も人探しをしてるんだと言ってたこと、私とはまたどこかで会えそうだと言われたこと…
それから。私の抱いていた彼のイメージ像よりも、実際の彼はちょっと物騒というか…冷たくて…怖かった、ってこと。
それらを赤井さんに話した。