第4章 思い出に浸る
今赤井さんと合流するのはNGだろう、一人でタクシーに乗って赤井さん宅に帰るべきか、それとも電車で米花駅まで帰るべきか……どうすればいい。
しばらく歩いて公園からは離れた所で立ち止まり、後ろを振り返ってみたけど…安室さんの姿は見えない。さっきからずっと変な胸騒ぎが酷く、収まらない。
とりあえず赤井さんに電話をかけてみる……と、ワンコールも終わらない内に彼はすぐに出てくれた。
「おい!大丈夫なのか」
「赤井さんこそ!公園から離れてください!」
「どうしたんだ…何があった」
「あのですね!バーボンが居て!話しかけられたんですけど、でもさすがに赤井さんの事はバレたらいけないと思ってですね…」
「なんだと…今はどうしている」
「公園出て、一人で歩いてますけど」
「尾行はされていないか?」
「多分されてないと思います…でも私の感覚がアテになるかは分かりません…」
「そうだな。とりあえず大通りでタクシーを拾って適当な駅の前まで行け。駅に着いたら、すぐに電車に乗るんだ」
「はい…」(やっぱり私の感覚はアテにならないそうだ)
「下りる駅が決まったらメールをくれ。そちらまで迎えに行く」
「はい!」(でも迎えに来てもらえるのは心強い!)
「だが特急や新幹線は勘弁してくれよ」
「…いくら私でもそれくらいは分かりますって」
すぐにタクシーを拾い、近くの東都環状線に乗れる駅まで運んでもらい、駅の券売機で3駅先までの切符を買った。
(この世界の東都環状線は私のよく知る山手線によく似ていて、駅名もあっちの世界と似てるから一番乗りやすい)
ホームから赤井さんに下りる予定の駅名をメールで伝えて、間もなくやって来た電車に乗り込んだ。
すぐに返信があり、内容は、“了解。下車の際は、駅に到着してもすぐに下りる素振りは見せず、ギリギリで素早く下りろ”とのことだった。
作中でコナンくん達もそんなことしてた回があったな…って記憶がふと蘇ってくる。なるほど、万が一尾けられてても、そうすれば躱せるかもしれない。
電車に揺られながらもまだ胸騒ぎは収まらず、車内や窓の外、あちこちを忙しなく眺めていた。視点が定まらないのだ……おそらく周囲の人からは落ち着きがない人物に見えただろう。とにかく尾けられてないことを祈るばかりだった。