第4章 思い出に浸る
車を下り、コンビニに向かって歩く。手に持ったスマホには、いつでも赤井さんに発信できるよう電話帳の画面を表示させたまま。
そりゃあ私は特別な訓練なんて受けたことがない。赤井さんに比べたら危機管理能力はゼロに近いだろう。だって違う世界から来たこと以外は普通の一般人だし。
けどさっきのはなんだか小馬鹿にされたような気がして…思わずムッとした態度を取ってしまった。
一人になれば興奮も冷めてきて、彼は当然のことを言ってただけなんだと気付くけど……赤井さん、気を悪くしてないといいな。
5分もかからずコンビニには到着し、自分の飲み物のついでに赤井さんのコーヒー、それからいつも彼が吸ってるタバコも一箱買った。私は彼のご機嫌でも取ろうとしてるんだろうか。
レジ袋を片手に下げ、もう片方の手ではまたスマホを握り締め、来た道を歩いて戻る。
この辺はどこにでもあるような住宅街。片側一車線ずつの道路の両脇には歩道があり、今はお昼前だからか車の往来はそこまで多くない。
努めて普通に、周りをキョロキョロせず、進行方向と自分の足元、たまにスマホ画面、それだけを見ながら歩いた。
次の曲がり角を曲がれば、車を停めていた所はすぐ近くだ…と交差点を見つめていたら手に持ったスマホが鳴り出し、それが赤井さんからの着信だったので慌てて出る。
「もしもし!?」
「今何処だ」
「もうすぐ着きますよ!」
「俺も今そちらに向かっている、合流しよう」
珍しく早口気味な赤井さんに「はいっ」と答えた瞬間、電話がプツッと切れ、前方の交差点から赤井さんの運転する車が出てきた。
何かあったのか。分からないけど急いで車に駆け寄り乗り込めば、またすぐに車は走り出す。
「どうしたんですか?何か…ありました?」
「バーボンだ。そちらから来たんだが気付かんかったか?白いスポーツカーに乗った金髪の男」
「えっ!全然気付きませんでした……赤井さんがいるのは、バレてない…ですよね?」
「おそらくな」
「まあ、バレてたら今頃後ろにいそうですよね…」
上半身を捻って後ろを振り返るけど、白いスポーツカーは見えない。
まあ、赤井さんは今日はサングラスしてるし(関係ないけどすごくダンディでカッコイイ)車も違うし、バレてない可能性が高いか。