第1章 入れ替わった…?
どこか落ち着いて話せる場所に……ということでコナンくんが連れてきてくれたのは、「親戚の家だけどここなら誰もいねーから」という工藤邸だった。
想像通りの本当に立派な洋館の前でタクシーは停まる。
スーツケースから一万円札を一枚拝借し、運賃を払い、私達は下車した。
「ねえお姉さん。それ強盗のお金だって、知ってるよね?」
「知ってるけどいいの。私、絶対捕まらないから」
「ふーん…」
広々としたリビングのような部屋に通され、キョロキョロと家具を眺めて内心はしゃいでいると、コナンくんがコーヒーを出してくれた。
(ここ、緋色シリーズで安室さんが工藤邸に乗り込んできた時の部屋!)
ソファに向かい合って座ると、コナンくんと視線が絡む。残念ながら、あまり良い雰囲気ではない。どうせなら仲良くしたいのに。
「もう教えてくれる?お姉さんが何者なのか」
「あー…そうだよね、私はといいます…でも、この世界の住人ではありません」
「……さんね。この世界の人じゃないんなら、どこの世界から来たの?」
「……分からない。住んでるのは東京だけど、こことはちょっと違うの」
「じゃあ、どうしてボクや雅美さんのことを知ってるの?」
「……それは…なんて言えばいいのか……」
「まさかヤツらの組織の人間か?…にしてはヘンだよな……いや、そもそも俺の目の前に急に現れた時点で相当ヘンだけど……」
「すっごい変だよね……でもねコナンくん。たぶん私、そのうちパッと消えていなくなるから、あんまり深く考えなくても大丈夫!短い間だと思うけど、仲良くしてくれたら嬉しいな」
そう。これは夢なんだから。どこかで目が覚めたら終わり。
「仲良くっつっても……一体どーしたら人間が消えたり現れたりすんだよ…」
「身体が縮んじゃうことより不思議だよね」
「そ…れは!?さん、何か知ってる…の?」
「…知ってるよ。コナンくんって、工藤新一くん、なんでしょ?」
彼の愕然とした顔……そりゃそうか、作中のこの時点だと、まだ阿笠博士しか彼の正体は知らないんだったか。
「もしかしてハカセの知り合いか…?」
「会ったことはないけど…隣の阿笠博士のことだよね?」
「どうしてさんが知ってんだ……嘘だろ……」