第4章 思い出に浸る
洗濯機を回し、朝食の片付けをして、メイクをして。
自室にてクローゼットの扉を開け、一人唸る。なんせ尾行?張り込み?なんて初めての経験で、何を着るべきか迷う。動きやすくて目立たない格好?
結局、Tシャツにストレッチの効いた黒いスキニー、スニーカーのカジュアルな出で立ちに決定した。
「こんな格好でいいですかね…?」
リビングに戻れば赤井さんが居たので、おずおずと是非を伺ってみる。(ちなみに彼もTシャツに黒いパンツ!)
「ああ、問題ない…だが念の為着替えを用意しておけ。ワンピースはあるか?女性はそれがラクだそうだぞ」
「途中で着替えるってことですか?」
「万が一にこちらの存在を怪しまれた場合はな。あとは対象者が格式張った場所に出入りする場合、こちらも対応できる服装でないと非常に目立つ」
赤井さんが手にしたテーラードジャケットと、(お馴染みの)革のライダースを見せてくる。
「なるほど…でもですね…私、きちんとした服って持ってないんです…」(なんせこの世界に来てからというもの、普段用のカジュアルな服しか買っていない)
「まあ今日の所は大丈夫だろう…とりあえず雰囲気の違う服を用意しておくといい」
「分かりました!」
クローゼットの前に戻り、紙袋に色も素材も全く違うワンピースを突っ込んだ。
洗濯物を浴室に干して(男物の下着を触るのは久しぶり過ぎてちょっと緊張したけど)、家を出て、駐車場に下りた。
「あの!実は私いつも思ってたんですけど…この世界の人達って目立つ車に乗りすぎじゃないですか?こんな車で張り込みするんです…?」
「今日は別の車を用意してあるから大丈夫だ」
「そ、そうでしたか…生意気なことを言いました、すみません…」
「いや、いい…そう思うのは尤もだ。逆に君は日本だとどういう車が目立たないと思う?」
「この世界のことはよく知りませんけど…今の日本だとアレじゃないですか?ハイブリッドの普通車?」
「ほう…参考にさせてもらおう」
とりあえずいつもの車に乗り、どこかの港へ向かい。空き倉庫と思しき所の扉を開ければ中にはドイツ製の高級セダン車が止まっていた。(多分ジェイムズさんの車)
「コレですか…?でもまあ、だいぶマシですよね…」
「ある程度スピードの出る車でないと困るからな」
「そっか…」