第4章 思い出に浸る
赤井さん宅で迎えた2回目の朝。
目覚めて布団の中で手足を伸ばせば感じる鈍い痛み。やっぱり筋肉痛だ。重たい身体を起こし、水を求めて部屋を出る。
リビングのカーテンを開ければ空は薄く曇ってはいるものの、雨模様ではない。
赤井さんの姿は見えない、私が先に起きたみたいだ。
冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、グラスに注いで飲んで。彼が起きてくる前にせめて歯磨きと、顔くらいは洗っておこうと次は洗面所へ向かった。
まずは歯を磨き、続いて顔も。パシャパシャと冷たい水を顔面に浴びせて……最終的に脇に置いておいたタオルに手を伸ばす…でも伸ばすまでもなく、あっさりと手にあたったタオル地……なぜ!?
パチッと目を開けば、赤井さんがタオルを渡してくれたんだと気付いた。タイミングの問題もあるのかもしれないけど、男性にこんな風にタオルを渡してもらった経験がなくて、なんだか照れ臭い。
「あ、ありがとうございます…おはようございます…」
「ああ、おはよう…」
タオルで顔を拭きつつ…スキンケアしつつ…コッソリ鏡越しに歯を磨き出した赤井さんを眺める。
寝起きのせいか少し不機嫌そうな面持ちの彼の頭は、私よりもだいぶ高い位置にある。やっぱり背、高い。当然ながら帽子は被ってない。
たまに前髪を掻き上げる仕草はまたとんでもなくカッコイイ…気付けばコッソリどころか視線が釘付けになっていて。
慌てて洗面所を後にする。
「赤井さんのタオルも置いておきますね!後で洗濯機回すんで洗うものあったら出しといてください!」
「ん…」
続いて朝食の準備に取り掛かる。
トマトの皮を剥いて細かく切り。卵をボウルに割り入れかき混ぜる。筋肉痛の腕が小さく悲鳴を上げるけど、しっかり混ぜる。
トーストだって、切れ目を入れて焼いた方がバターが中まで染みて絶対美味しい…
そうこうしていれば赤井さんがリビングにやってくる。
「…何か手伝うか?」
後ろから私の手元を覗き込むように近付かれると、結構頭が近くて恥ずかしいんですが……
「うんと…じゃあ…テーブル拭いて、フォーク出しておいてください!」
「分かった……何を作るんだ?」
「大したものじゃないんであれですけど…トマトオムレツです!ソーセージかベーコンも食べます?」
「…ベーコンがいいな、焼いてくれるのか?」
「もちろんです!」