第3章 パンと卵とコーヒーさえあれば
「…どうでしょう……どうしてお姉ちゃんを利用したの、とは思ってるかもしれません……でも赤井さんは、大好きなお姉ちゃんの愛した人ですから…憎みきれない所もあるのかも…多分すごく複雑なんじゃないかな…」
「そうか…」
ダメだ…なんか泣きそうになってきた。奥歯を噛み締め、込み上げてくる諸々を堪える。
「あの…赤井さんは、私と初めて会った時…どう思いました?私のせいで明美さんがいなくなった、とか…思いませんでした?」
「どのみち明美は死んでいたんだろう?それは君のせいでもないんだから、責める点もない」
「そうですか…」
だけど次に涙も引っ込むような質問が飛んできて。もう感情を抑える必要はなくなった。さすがは赤井さん…鋭い。
「なあ…工藤新一の現在の姿は、君と仲良くしている江戸川コナン、あのボウヤじゃないのか?」
「……なんで知ってるんですか……そうです……でもそっちも内密にお願いしますよ」
「ああ。以前君の周りを調べた時に、そのボウヤの事も気に掛かっていてな……さん同様、調べても何の情報も出てこんから…君のように違う世界から来た人間なんだと思っていた」
「なるほど…たしかに……あの、今朝言ってた、赤井さんに紹介したい賢い子っていうのが彼です」
「あのボウヤのことだろうとは思っていた。まさかそれが工藤新一だとは思わなかったがな」
ハッと愉しそうに笑った赤井さん。今何か面白いことなんてあっただろうか?
「赤井さん、なんか楽しそうですね」
「ああ。薬の作用とは言え、俺の他にもあの組織に命を狙われ逃げ切れたヤツがいたんだからな…彼とは是非仲良くしたいな、いつ会える」
「それは折を見て…っていうか、ほっといても二人はいずれ会うことになるんです」
「…愉しみだな」
「楽しみにするのはいいですけど、本っ当にこの事は内緒ですからね!」
「分かっている。さて……お好み焼きの煙も浴びたことだし、風呂にするか…」
「はい。お湯張りますね…あっ!もちろん入るのは別々ですよ!」
お風呂の支度をして、彼に先に入ってもらい。入れ替わり私も入った。
お風呂上がりの赤井さんがセクシー過ぎてまたもや目のやり場に困ったのは、言うまでもない。男の人に“セクシー”だなんて思ったのは、彼が初めてじゃないか。濡れた前髪がなんとも色っぽかった。