第3章 パンと卵とコーヒーさえあれば
ホームセンターでとりあえずの生活用品一式を買い、全てを車に積んで戻る。寝具(ベッドじゃなくて布団)に収納ケース、調理道具から食器に至るまで…沢山買ったけど全てがこの車1台に載るんだからすごい。
ちゃんと雨が降る前にマンションには戻ってこれた。
何度も駐車場と部屋を往復し(重たい物のほとんどを無言で赤井さんが運んでくれてちょっとキュンとしたのは内緒だ)、買ってきた物をあくせくとそれぞれの場所に配置するだけで、もう外が暗くなってきた。パラパラと雨まで降り出したよう。
調理器具も揃ったし、何か晩ご飯を作ってあげたいものの、正直身体はクタクタだ……
リビングのソファにどっかり座り、手足をウンと伸ばす。
「やっと終わったー…久しぶりにこんなに動きました…疲れたー…明日は絶対筋肉痛だな…」
「やはり君は普通の女性のようだな」
「…?違う世界から来たって所以外は普通だと思いますけど?」
「そのようだ」
「どういうことです?私何か変でした?」
「いいや。何も変な所が無い、という事だ」
「……はい…?」
彼が何を言ってるのか、よく分からない。悪い事を言われてる感じではないようだけど…
「晩飯はどうする?疲れているなら外に食べに行くか?」
「そうしてもらえると有り難いです…あーでも朝ごはんの買い物はして来なきゃなぁ…」
「俺はパンとコーヒーで充分だ」
「私はあとせめて卵くらいほしいです…」
昨日は一時的に泊めてもらった感じだったけど、たった一日で自分の生活用品も一通り揃い、急に決まった私の仮住まい、赤井さん宅での生活が始まった。(身分証を手に入れて新しい家に引っ越すまでの短い間だけど)
赤井さんとマンションを出て、小雨がシトシト降る中、傘を差して近くのスーパーがある方向へ歩いて向かう。スーパーまでは徒歩3分、私の提示した条件にちゃんと合致してるんだからニクい。
道すがら、食欲をそそるソースの匂いにつられ、本日の夕食はお好み焼き屋に決定した。
赤井さんはあまりお好み焼きに馴染みがないようで。鉄板の上で私が生地を焼いていく様子を物珍しそうに眺めてくるから面白かった。
それに「まだ焼けないのか?」「もうそろそろじゃないか?」って言いながらじっと鉄板の上を見つめる…そんな彼は子供みたいですごく可愛かった…!