第3章 パンと卵とコーヒーさえあれば
「スコッチの本名は景光さんって言って、料理が得意で…すごく優しい青年でしたよ……結構好きだったなぁ…」
「なんだ、さんはスコッチに惚れてたのか?」
「惚れ…?それはちょっと語弊があります…普通に好きでしたけど。同じように赤井さんも好きですしね」
「ほう…では俺のどういう所が好きだ?」
「そりゃあ見た目も声もカッコイイし…頭も良くって、とにかくクールですよね!頼れる男!って感じ…って本人目の前にして言うと結構恥ずかしいですね…」
流れに乗ってつい言ってしまったけど…でも事実だし。
それに赤井さんが満更でもなさそうに笑ってるからいいか。
カレーを食べ終え店を出て、再び車に乗り。次は郊外の大型ホームセンターに向かう。しばらくの生活に必要な物はそこで全て揃えられるだろう。
空は重たい曇り空。無言でいると、不意に頭に蘇ってくるあのシーン…
スコッチの最期の話は何度も読み返してよくよく知ってはいたけれども…読む度、思い出す度にやっぱり切なくなる。
私にとってはマンガの切ないワンシーン、でも彼にとっては自分の身に起こった出来事なんだよな……
ふと隣を見る。運転席の赤井さんは前方を見据え無表情…と思っていたら目が合ってしまった。
「どうした?浮かない顔だな」
「…スコッチのこと思い出したらなんとなく」
「君が気に病む話じゃない…そうだ、もう一つ聞いておきたいんだが…」
「はい?」
「バーボンは、何者だ?」
その質問がきたか…と変に胸が騒ぎ出した。何を話すべきか。
「……赤井さんはどう思ってるんです?」
「俺は…彼も公安組織の人間じゃないかと思っている…確証は無いが」
「その読みで当たりです」
「やはりそうか…」
「でも赤井さんって、彼にかなり恨まれてるんですよ…FBIであるなら何故スコッチを逃がしてやらなかったのかって。バーボンとスコッチは、小さい頃からの幼馴染みでもあったみたいだから…」
「……成程な……いつか素の彼に会えたら謝ろうとは思っている…」
「……いつか会う時は来ます、でもまだ今はその時じゃありませんね……」
また車内は無言になった。
安室さんっていつ米花町に現れるんだったか……まあ、彼らの再会がまだまだ先なのは間違いない。