第1章 入れ替わった…?
コナンくんに手を引かれながら、見知らぬ土地を走る。
小さな手にしっかりと手を握られている感触、自分の足で地面を蹴り上げる感覚が妙にハッキリ伝わってくる。走り続けることで息まで上がってきて結構しんどい。すごくリアルな夢だ。
ひとまず姿を隠せそうな路地裏に私達は逃げ込んだ。
「ねえ、お姉さんて、誰なの?」
「…名乗っても…分からないでしょ…」
「広田雅美さん、では無いんだよね?」
「ひろたまさみ……ってもしかして10億円強盗した?違う違う、別人」
「ボクのことも、雅美さんのことも…知ってるんだね」
「知ってるっていうかなんていうか……まず私、ちょっと今の状況が分からないんだけど…」
江戸川コナンを知ってるのは元より、広田雅美といえば宮野明美の偽名だ。あの灰原哀の姉で…あの赤井秀一の元恋人。そりゃあ知ってるけど、知り合いであるのとは全然違う……
「さっき…雅美さんは死にかけてたんだ、悪い奴に撃たれて……でも急に雅美さんの身体が消えて、代わりにお姉さんが現れたんだよ」
「っ!?撃たれたって、もしかしてジン…に?」
「名前は分かんねーけど…撃ったのは黒服を好んで着る組織の男だ」
「うわ…やっぱり……」
これってマンガの作中で言えばかなり初期の頃か。
私は、強盗をやってのけ、黒の組織に消された宮野明美と身体が入れ替わった…?みたいだ。
だとしたら…次に取るべき行動は……
「10億円!たしか、雅美さんがいたホテルのフロントに預けられてるよ!もう聞いてた?」
「…聞いてないけど…どうしてそんなことお姉さんが知ってるの?お姉さん、何者?」
「それは後で話すから!今は悪いヤツらより先にお金回収しないとマズいんじゃない?」
「…みてーだな」
大通りに出て、タクシーを拾って飛び乗る。さすがにホテルの名称までは覚えてなくて焦ったけど、よかった。コナンくんの口からそのホテルの名前はすぐに出てきた。
しかし。いざホテルに着いてみれば、自分は運賃を払うお金も持っていなかったことに気付く。コナンくんも現金は持ち合わせていないようだ。
でもフロントには10億ある……
……これって夢だもんね、別にいいよね?
私はタクシーをそのまま待たせ、ホテルのフロントに預けられていたスーツケースを全て受け取り、再びタクシーに乗り込んだ。(たぶん犯罪)